昭和49年10月5日(土)放映
第1話「宝石泥棒に子守唄を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 真屋順子 |
船戸順 | 富田仲次郎 | 加藤和夫 | ホーン・ユキ(浅川京子) | 桐生かほる |
相沢治夫 | 坂上忍 | 団巌 | 八名信夫 | 舞砂里 |
オスマン・ユセフ | イクバル・ハニス | モーリン・ピーコフ | 星野富士雄 | 西山健司 |
石井麗子 | 出原健一 | 金子信雄 | 西村晃(海津警部) | |
【物語】
文無しの木暮修(萩原健一)に、綾部探偵事務所の貴子(岸田今日子)から仕事の依頼があった。
一流の宝石店へ強盗に入り、時価三億円以上の品物を奪い、警察に捕まれという。
修は首尾よく事を運び護送される。
しかし、そのパトカーにダンプカーが突っ込んで来た。
修はぶちのめされ連れ去られる。
裏には盗品横取りのグループが暗躍しており、貴子はその盗品をまた横取りしようと企んでいたのだ。
【解説】
深作欣二監督が、手持ちカメラを多用して軽快にまとめた設定編。
レギュラーたちの位置関係を、小気味よく見せる。
岸田森は、辰巳を切れ者風には演じているが、気が小さい所も同時に見せた。
この部分が後に誇張されてゆく。
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昭和49年10月12日(土)放映
第2話「悪女にトラック一杯の幸せを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 上野山功一 |
ホーン・ユキ(浅川京子) | 北村総一郎 | 柏原巨典 | 和久井節緒 | 矢野宏 |
岸井あや子 | 高杉哲平 | 貫洞卓史 | 飯田高栄 | 新井一夫 |
小幡利二 | 江原達怡 | 緑魔子(恵子) | | |
【物語】
貴子の依頼で、修(萩原健一)は、恵子(緑魔子)の即席の恋人になる。
しつこい男から逃げたいということだった。
だが、デートを始めてすぐに男達の仲間が現れ、二人共ら致されてしまう。
二人は拷問を受け、ブツの隠し場所を聞かれた。
恵子は修が知っていると言い張るが、もちろん修には何のことだかさっぱりわからない。
辰巳(岸田森)の助けでなんとか逃げ出し、しらを切る恵子を問い詰める。
ブツとは密輸の銀製洋食器で、恵子が隠し持っていた。
話を聞いた修は、ブツを横取りとようと企む。
【解説】
第1話に引き続き、この回でも手持ちカメラを多用して臨場感を醸し出している。
全編、緑魔子と主人公二人にスポットが当たっているので岸田森の登場シーンは少ない。
第1話とは違う髪形で、全編ほとんどサングラスを掛けたまま、クールにびしっと決めている。
関連作品
永原秀一
狙撃(昭和43年1968 )
弾痕(昭和44年1969 )
乱れからくり(昭和54年1979)
蘇える金狼(昭和54年1979)
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昭和49年10月19日(土)放映
第3話「ヌードダンサーに愛の炎を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 都家かつ江 |
ホーン・ユキ(浅川京子) | 白石奈緒美 | 伊達三郎 | 大木正司 | 伊達弘 |
花田達 | 城春樹 | 鈴木義幸 | 佐藤治吉 | 稲田千恵子 |
川名美也子 | 築地博 | 八木和子 | 宝京子〈ロック座〉 | 宝ナナ〈ロック座〉 |
宝千波〈ロック座〉 | 宝美津江〈ロック座〉 | 宝ひさえ〈ロック座〉 | 室田日出男 | 中山麻理 |
【物語】
修(萩原健一)は、ストリップ劇場の看板ダンサー、有明マリを
実家へ帰すように指令を受け、劇場の幕引きとして潜り込む。
だが、ヒモの忠と幸せな日々を送るマリには帰る気などさらさらない。
仕方なく、修はマリを寝取る作戦に出た。
【解説】
第1話と同じ、深作欣二監督作品。
討ち入りを手伝いに行った修(萩原健一)が、怖くなって逃げ出してしまうところが生々しい。
岸田森の髪形が、第1話と同じところから同時期に撮影されたと思われる。
浅草ロック座という、有名なストリップ劇場を舞台にしているので、
ストリップの舞台が執拗に映されるエピソードだ。
岸田森は、口では興味ないふりをしているが、
実はストリップに興味津々というむっつりスケベ役を、楽しそうに演じていた。
最後は、余りにも汚いやり方に怒り狂った修に、ボコボコにされてしまう。
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昭和49年10月26日(土)放映
第4話「港町に男涙のブルースを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | ホーン・ユキ(浅川京子) | 潤ますみ |
山中貞則 | 中野エリ | 山本精二 | 阿部徳久次 | 佐藤善邦 |
鹿島信哉 | 佐古雅美 | 小海とよ子 | 田島義文 | 二見忠男 |
荒砂ゆき | 池部良(梶) | | | |
【物語】
ひんぱんに起こっている冷凍エビの抜き荷事件を調べるために、
修(萩原健一)は小さな港町にやって来た。
だが、修は殺し屋に命を狙われる。
その危機から救ったのは、飲んだくれの梶(池部良)だった。
梶は、内縁の妻をモデルに、ヌードスタジオを開いているという。
事件に関係あると睨んだ修は、梶の家に泊まり込むことにした。
【解説】
池部良の演技が話を引き立てる一編。
全編和服で通し、昔気質の意地を見せる。
監督の神代辰巳は、にっかつロマンポルノで傑作を次々と発表した才人。
象徴的なシーンを何回もはさみながら、この救いのない話を、悲壮感を感じさせずに描ききった。
監督は、この作品で始めて岸田森と組み、
翌年『黒薔薇昇天』『櫛の火』で再び岸田森とコンビを組む。
息もぴったり合って、岸田森の芝居もやり過ぎるくらい乗りに乗っていた。
特にラストシーンで、仕事を台なしにされた腹いせに、魚のはらわたを海にばらまくシーンは傑作。
辰巳(岸田森)のセコさを際立たせた。
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昭和49年11月2日(土)放映
第5話「殺人者に怒りの雷光を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 檜よしえ |
ホーン・ユキ(浅川京子) | 森みつる | 木村豊幸 | 谷岡行二 | 影山丈二 |
竹内大介 | 日野麗子 | 佐藤明美 | 平沢信夫 | 原田君事 |
保坂六巳 | 加藤嘉 | 松山省二 | | |
【物語】
修(萩原健一)は、広告パネル嬢の虜になってしまう。
彼女を手に入れるため一働きしようと、綾部探偵事務所に駆け込んだ。
しかし、事務所では、仲間の信男が毒殺されたことを知らされる。
数日後、同じ仲間の満男も殺される。
誰かが綾部事務所を狙っているらしい。
修達は、仕事の依頼をしてきた暴力団の仕業と早とちりして、勝手に殴り込みを掛けてしまう。
【解説】
独特な世界観を持つ市川森一の脚本が光る一編。
必殺シリーズ等でコンビを組む、工藤栄一監督との顔合わせ。
岸田森はこのエピソードでも、やりたい放題の芝居をしていた。
ヤクザに落とし前をつけるシーンで、いきなりカツラを取って泣き崩れるというのは、滅茶苦茶にインパクトがある。
当時の週刊誌の
記事にも取り上げられたほどだった。
関連作品
あさき夢みし(昭和49年1974)
傷だらけの天使 第11話「シンデレラの死に母の歌を」
雑誌記事 「 ひろめやひろめ 男優は頭を剃るのが当然〜岸田森が頭髪をバッサリ〜」(昭和49年1974)
新聞記事 「艶技中にツルリ!岸田森、湯気の出るベットシーン 川村真樹を相手に NTV「傷だらけの天使」」(昭和49年1974)
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昭和49年11月9日(土)放映
第6話「草原に黒い十字架を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 船戸順 |
瀬島充貴 | 高木均 | 阪(禾斉) | 大村千吉 | 大井小町 |
苅谷俊介 | ミッシェル・デュケーネイ | 石田徹 | 芳賀まり子 | 降旗慶一 |
正満卓也 | | | | |
【物語】
保険会社の依頼で、国際的な名画窃盗団に狙われている時価二億円の「六月のマドンナ」を美術館から盗みだし、
偽物とすり替えるという仕事を辰巳(岸田森)が持ち込んできた。
修(萩原健一)は乗り気ではなかったが、金のない亨(水谷豊)が、勝手に仕事を引き受けてしまう。
美術館に忍び込んだ修は、そこで、絵に母親の面影を見ている少女と出会った。
【解説】
少女と主人公二人の逃避行を描く。
冒頭の、辰巳(岸田森)と修(萩原健一)のいがみ合いが、辰巳の性格の幼稚さを表現していて面白い。
このストーリーで、初めて辰巳が胃下垂だと語られる。
岸田森の芝居は、シリーズが進むごとに悪乗りしてくる。
この回でも、車を逆走させて尾行したり、砂糖壷の中にハツカネズミを入れたりと、やりたい放題。
また、何回も岸田今日子の物まねを繰り返すのが楽しかった。
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昭和49年11月16日(土)放映
第7話「自動車泥棒にラブソングを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 蟹江敬三 |
ホーン・ユキ(浅川京子) | 奥村公延 | 如月寛多 | 小暮省三 | 今井耐介 |
木浦スミ江 | 川口晶 | 高橋昌也 | 西村晃(海津警部) | |
【物語】
修(萩原健一)は、辰巳(岸田森)から、某自動車メーカーの車のみを盗む窃盗事件の犯人探しを依頼される。
早速、囮の車を見張っていると、現われた犯人は、何と修の相棒、亨(水谷豊)だった。
亨を追跡する修の車の前に、自動車窃盗団のボスの愛人、徳子の赤いスポーツカーが割ってはいってくる。
修は、徳子と意気投合。
彼女が運んでいた組織の金を一緒に持ち逃げしてしまう。
【解説】
修(萩原健一)と亨(水谷豊)、そして徳子の三人が、組織のやり方に腹を立てて逃避行をする。
しかし、結局は組織から逃れられずに、救いのないラストを迎える。
綾部探偵事務所や警察、そして自動車窃盗団の描かれ方は、主役達と対比させるために、特に非人間的に描かれていた。
辰巳(岸田森)は、仕事を依頼するときに、ステーキをガツガツ食べ続ける修に向かって延々嫌味を言い続ける。
だが、修はまったく気にしていないのが可笑しかった。
辰巳は、胃下垂のためにメロンかヨーグルトの軽食だけしか食べられないのだ。
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昭和49年11月23日(土)放映
第8話「偽札造りに愛のメロディーを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | ホーン・ユキ(浅川京子) | 田辺節子 |
木島進介 | 沢りつ男 | 杉義一 | 戸塚孝 | ピーター・ウィリアムス |
萩原信二 | 近藤宏 | 有島一郎(中川) | | |
【物語】
辰巳(岸田森)の差し金で、修(萩原健一)はにせ札造りの一味を追うことになる。
見つかった偽札は、音楽大学の赤木モエ子から、留学費用として旅行会社に払い込まれたものだった。
モエ子に近づいた修は、彼女に中川(有島一郎)というパトロンがいることを突き止める。
実は、中川がニセ札造りの技術者だった。
【解説】
脚本家は、第1話の柴英三郎が担当。
市川森一らの脚本とは違い、修たちの描かれ方ヒーロー然としていて、ラストは格好良く貨物船の中で大暴れする。
劇中、浪花節が効果的に使われて、物語を盛り上げた。
今回の事件は、辰巳(岸田森)が事務所を通さないで行った仕事らしく、報酬がいつもの10倍という豪華なものだった。
しかし、成功させるために修たちをニセ札製造組織に密告したりと、相変わらずやり方が姑息だ。
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昭和49年11月30日(土)放映
第9話「ピエロに結婚行進曲を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 志摩みずえ |
水上竜子 | ホーン・ユキ(浅川京子) | 奥山正勝 | 滝田裕介(磯崎真介) | |
【物語】
磯崎(滝田祐介)は、妻の麗子を殺してくれと修(萩原健一)に前金の50万円を渡す。
しかし、いくら金をもらっても修には人殺しは出来なかった。
翌朝、麗子殺しの記事が新聞に載る。
自分では何もしていない修は、何が何だか分からない。
しかも、磯崎からは後金50万円が届いてしまう。
そのころ、貴子(岸田今日子)に婚約者が現れる。
相手はなんと磯崎だった。
【解説】
綾部貴子(岸田今日子)の婚約という事態に、レギュラー三人が、三者三様の反応を見せる。
特に辰巳(岸田森)のうろたえ方はすさまじく、いつもは相手にもしない亨(水谷豊)にからかわれるほどだ。
そして、婚約者の身辺調査も勝手に行ってしまう。
部屋の壁一面に描かれた亡き父の肖像画は、はさみが刺さると何の前触れもなく血が流れ出す。
傷つけられたプライドを象徴する、シリーズには珍しい抽象的なシーンがある。
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昭和49年12月7日(土)放映
第10話「金庫破りに赤いバラを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | ホーン・ユキ(浅川京子) |
松下達夫 | 田村孝司 | 浜田寅彦 | 川崎あかね | 加納典明 |
小松政夫(一平) | | | | |
【物語】
修(萩原健一)と亨(水谷豊)は、辰巳(岸田森)の命令で電気会社の金庫から書類を盗みだすことになった。
ところが、別の二人組に、書類と現金を先に奪われてしまう。
二人組の一人、一平(小松政夫)を捕らえ、仲間のところに案内させる。
しかし、一平の相棒はすでに惨殺死体となって押し入れに詰め込まれていた。
【解説】
ゲストの小松政夫の好演が光る一本。
萩原健一、水谷豊との相性も非常に良くノリに乗った演技を見せた。
ラストシーンでは『太陽にほえろ!』の七曲署のセットを流用。
また、修(萩原健一)の苦笑いしている指名手配写真が、シリーズ三度目の登場をする。
辰巳(岸田森)は、亨(水谷豊)にキツイ事をズバズバ言うが、
貴子(岸田今日子)の前に出ると全く頭が上がらない。
中間管理職そのものなのが楽しい。
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昭和49年12月14日(土)放映
第11話「シンデレラの死に母の歌を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 服部妙子 |
香月淳 | 山口萌 | 大山いづみ | 夏木順平 | 島岡淳 |
小宮和枝 | 浦辺粂子 | 川村真樹 | 平田昭彦 | |
【物語】
億万長者のたった一人の相続人として、二人の女が名乗り出た。
一人はホステス松原初子。
もう一人はキーパンチャーの村山初江。
二人とも、骨格鑑定や血液鑑定の結果、本物の条件はそろっていた。
決定的な証拠をつかむために修(萩原健一)は初江に、亨(水谷豊)は初子にアタックする。
【解説】
本当の相続人をめぐっての駆け引きに巻き込まれた修(萩原健一)達は、虫ケラのように利用される。
そして、傷だらけになりながらも、最後には貴子(岸田今日子)達の計画をぶち壊して一矢を報いる。
冒頭で、貴子が掛けている電話を、辰巳(岸田森)が立てひざで捧げているシーンがある。
いつもあんなことをしているのかと思ってしまうが、岸田今日子が相手だと実に違和感がないから不思議だ。
このエピソードでも、辰巳が再び修の物真似をする。
しかも、今回はセリフだけではなく、衣装をつけて女に誘惑されるという徹底したものだった。
そして、腹巻きをしてその中に女性雑誌を挟み込んむという、ワケのわからない変装が可笑しい。
ともかく殴り合いが多いエピソードで、辰巳、修、亨の三人は、そろってボコボコにされている。
コミカルなシーンが多いが、登場人物誰一人として救いの無いエピソードだ。
関連作品
あさき夢みし(昭和49年1974)
傷だらけの天使 第5話「殺人者に怒りの雷光を」(昭和49年1974)
雑誌記事 「 ひろめやひろめ 男優は頭を剃るのが当然〜岸田森が頭髪をバッサリ〜」(昭和49年1974)
新聞記事 「艶技中にツルリ!岸田森、湯気の出るベットシーン 川村真樹を相手に NTV「傷だらけの天使」」(昭和49年1974)
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昭和49年12月21日(土)放映
第12話「非情の街に狼の歌を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 清川新吾(松村) |
ホーン・ユキ(浅川京子) | 高橋ひとみ | 佐藤京一 | 鈴木和夫 | 畠山麦 |
神山卓三 | 水原麻記 | 土屋嘉男(浜田) | | |
【物語】
商社員の松村(清川新吾)が、会社の裏金一億四千万円を持ち逃げした。
松村の妻、由紀の依頼で熱海へやって来た綾部事務所のメンバーは、
松村が熱海から海外に飛ぶと予想していた。
辰巳(岸田森)はその金の横取りに必死。
だが、由紀も金のことしか頭に無い冷徹な女だった。
【解説】
辰巳(岸田森)主演のエピソード。
修(萩原健一)は冒頭で交通事故に遭い、ほとんど活躍しない。
土屋嘉男が扮する逃亡請負屋は、商社の金を持ち逃げした松村との契約を守り、命懸けで秘密を守る。
その姿に亨(水谷豊)や修は心打たれるが、辰巳は仕事のことしか考えない。
そして、強引に松村の居場所を白状させようとして結局死に追いやってしまう。
だが、当の松村は、金を返し詫びを入れて何事もなく商社に戻ってしまう。
修にも責められ、良心が咎めた辰巳は、商社に出向き、
銃で何発も撃ち抜かれた片足を持ち込み、松村を脅しつけた。
そんな彼の一面を見て、亨(水谷豊)は始めて辰巳に親近感を覚える。
ただし、自分で作った蝋の足を見て気持ち悪くなってしまい、
亨に代わりにセリフを言われてしまう冴えない所が、いかにも辰巳らしい。
今まで脇役だった岸田森が、存分に活躍しているエピソードである。
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昭和49年12月28日(土)放映
第13話「可愛いい女に愛の別れを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 田口計 |
ホーン・ユキ(浅川京子) | 加賀邦男 | 山田禅二 | 東大二朗 | 加茂さくら |
加藤茂雄 | 伊藤よし子 | 邦創典 | 船戸順 | 吉田日出子(明子) |
【物語】
辰巳(岸田森)は、偽装倒産を図った東西カメラ犬山社長の娘、明子(吉田日出子)を
修(萩原健一)と亨(水谷豊)のペントハウスに軟禁させていた。
なんとか犬山を債権者会議に出席させようとしていたが、娘を置いたまま姿をくらましてしまったのだ。
修達は必死に犬山の行方を追うが、全く手掛かりがない。
犬山に和子という愛人がいるということを知った亨は、彼女を訪ねる。
だが、訪問している間に、車のトランクへ犬山の死体を詰め込まれてしまう
【解説】
自由劇場の吉田日出子が、世間知らずの御嬢様を印象的に演じるエピソード。
修(萩原健一)達は、辰巳(岸田森)に騙されて、明子(吉田日出子)を預る羽目になってしまう。
しかし、社長が失踪すると、途端に誘拐犯人にすると辰巳は脅しを掛けてくる。
結局最後には、二人は利用されるだけ利用され、ギャラも削られてしまう。
辰巳の腹黒さ全開である。
事件が片付き、修は身寄りのなくなった明子を、デパートに置き去りにしてしまう。
怒る亨(水谷豊)に、修は自分たちには人を助ける力なんてないと言い切ってしまう。
ほろ苦いラストだ。
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昭和50年1月4日(土)放映
第14話「母のない子に浜千鳥を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 丘ゆり子 | ホーン・ユキ(浅川京子) |
石山雄大 | 芳賀まり子 | 大江徹 | 正満卓也(小暮) | 中島元 |
大原穣子 | 戸川曉子 | 浅野進治郎 | 小峰千代子 | 桃井かおり(照代) |
【物語】
正月ぐらいは息子、健太のそばにと考えた修(萩原健一)は故郷へと向かう。
だが、そこには健太は居なかった。
三カ月ほど前、死んだ妻の姉、照代(桃井かおり)が、身寄りのない健太を引き取っていったのだ。
修は、亨(水谷豊)と共に、とある温泉にある照代の店「浜千鳥」へと訪ねる。
だが、その店は120万円もの借金を抱えていた。
【解説】
セリフには頻繁に出てきていた、修(萩原健一)の息子、健太の初登場エピソード。
市川森一の脚本らしく、登場人物が故郷へ錦を飾らなくてはならなくなり、自らを嘘で飾り立てる。
健太も、その道具として使われてしまうが、境遇を聞いた修は許してしまう。
最後に照代(桃井かおり)に、嘘をついて餞別を渡すというのも、いかにも市川森一らしいラストだ。
このエピソードは、クレジットはされているが岸田森は出演していない。
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昭和50年1月11日(土)放映
第15話「つよがり女に涙酒を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 熊谷俊哉 |
奥野健明 | 葉山裕康 | 見城貴信 | 本田初生 | 西脇洋 |
八木和子 | 稲葉義男 | 渡辺文雄 | 松尾和子(ミツコ) | |
【物語】
修(萩原健一)は島岡財閥の一人息子、信彦誘拐事件の調査を命じられた。
修と亨(水谷豊)はキャバレーにボーイとして潜入、
そこで歌っているミツコ(松尾和子)をマークする。
ミツコは、信彦の実の母であり、誘拐事件は母と子が共謀したものだったのだ。
【解説】
親子の愛情がからむ事件を描く。
修(萩原健一)は、自分とミツコ(松尾和子)の境遇が似ていることに気づき、親近感を抱く。
そして、誘拐が狂言と気付き、本心から辞めさせようとする。
一方、亨(水谷豊)は息子の信彦の境遇が、自分の過ごしてきた一生に似ていることから、修に反発、狂言を手伝う。
親と子の立場の違いは、修と亨の立場の違いで、さらに誇張される。
亨をいさめる修は、まるでいつもの辰巳の様になってしまうのが面白い。
レギュラー二人の関係が良くわかるエピソードと言える。
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昭和50年1月18日(土)放映
第16話「愛の情熱に別れの接吻を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 右京ちあき |
加賀ちかこ | ホーン・ユキ(浅川京子) | 小林尚臣 | 小倉雄三 | 上野綾子 |
槙ひろ子 | 林光子 | 田川勝雄 | 広田正光 | 八木和子 |
小海とよ子 | 尾崎八重 | 川名美也子 | 山下洵一郎 | 高橋洋子(桃子) |
【物語】
修(萩原健一)は、ゆきずりの女、桃子(高橋洋子)と一夜を明かした。
その翌日、修は、探偵事務所の仕事で、行方不明の野村桂子の捜査を開始する。
桂子の通っていたホストクラブの売れっ子ホスト勝部高之は、かつて彼女と深い仲だった。
修は、ホストになり潜入調査することになった。
修の野生的なところが受け、客には評判が良い。
しかし、修に言い寄る客、淑子が何者かに殺され、修は警察に呼びだされた。
【解説】
高橋洋子が扮するゆきずりの女は、修(萩原健一)をつけ回し、押し掛け女房にまでなろうとする。
そして、修に近寄る女性を、独占欲から殺そうとするのだった。
同時に、捜査を担当していた誘拐事件も、独占欲から起こったものだと判明する。
男と女の立場は違っても、相手を独占したいのは同じなのだ。
辰巳(岸田森)は、警察に呼びだされた修のかわりに、嫌々ホストになる。
あまりにもぎこちなく、怖い顔のホストだったが、何故かまわりのマダムからの受けは良かったようだ。
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昭和50年1月25日(土)放映
第17話「回転木馬に熱いさよならを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 福田豊土 | 遠藤剛 |
磯部勉 | 鈴木朗 | 木村而呂 | 伊東辰夫 | 中寛三 |
松本潤子 | 草間璋夫 | 江夏夕子 | 橋本功 | 中原早苗(久美子) |
【物語】
遊園地を経営する会社に内紛があるというので、修(萩原健一)と亨(水谷豊)はスパイとして入社した。
女社長の久美子(中原早苗)は、妹のマサ子を専務の斉藤と結婚させようとしていた。
しかし、マサ子は施設部長の新田と恋愛中だった。
新田は、何かと修たちに目をかけてくれた。
修は、働きながら営業部長、柿本の不正を調べ上げ、報告書にまとめた。
しかし、辰巳(岸田森)は逆の報告書をでっち上げる。
そのために、新田がクビになってしまった。
【解説】
シリーズには珍しいハッピーエンドの作品。
舞台となる多摩川園遊園地とのタイアップだったので、遊園地にふさわしい話にしたのかもしれない。
そのせいか、いつものハンドカメラの粗っぽい映像は、このエピソードにはほとんどない。
いつもはクールな辰巳(岸田森)も、
最後に改心して修(萩原健一)の頼みを聞き、遊園地の危機を救う手助けをする。
公園の手すりで遊ぶ岸田森の表情が、本当に嬉しそうなのが印象的だ。
そして、それを亨(水谷豊)にごまかすときの絶妙な間合は岸田森ならではである。
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昭和50年2月1日(土)放映
第18話「リングサイドに花一輪を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 朝倉隆 | ホーン・ユキ(浅川京子) |
梅津栄 | 和田文夫 | 苅谷俊介 | 波戸崎徹 | 古川義範 |
今井健二 | ファイティング原田 | 中谷一郎(浩次) | | |
【物語】
ボクシングジムの立ち退き工作を地主から依頼された修(萩原健一)と亨(水谷豊)は、
練習生としてジムに潜り込んだ。
二人はジムの評判を落とそうと、チンピラに喧嘩を売る。
しかし、逆にスリを捕まえてしまい評判を上げてしまう。
近づく選手権で、ジムは活気づき、修は自分たちのやっていることに後ろめたさを感じる。
【解説】
ジムに潜り込むが、亨(水谷豊)の方がボクシングのセンスがあるといわれ、修(萩原健一)は面白くない。
しかし、中谷一郎が演じるジムのコーチ工藤の心意気に触れた修は、
仕事を放り出してコーチを助けることになる。
いつものように辰巳(岸田森)の密告で事態は急変し、工藤は刺し殺されてしまう。
それにしても、辰巳のために、何人の人が死ぬ羽目に陥ったか…。
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昭和50年2月8日(土)放映
第19話「街の灯に桜貝の夢を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 森幹太 | ホーン・ユキ(浅川京子) |
大口ひろし | 阿藤海 | 山口貴光 | 大出洋幸 | 大山豊 |
今井和雄 | 加藤茂雄 | 石川隆昭 | 鹿島信哉 | 出射みつ子 |
石井麗子 | 松永守 | 団五郎 | 塩塚勝正 | 関根恵子(明美) |
【物語】
修(萩原健一)と亨(水谷豊)は、自分たちのペントハウスをジュータン・バーに改造。
亨の恋人でクラブホステスの明美(関根恵子)をコールガールに仕立てて怪しげな商売を始めた。
それを知った辰巳(岸田森)は、ペントハウスを追い出さない条件として、
ある建築会社の社長を客にすることを命じられる。
スキャンダル写真を撮れというのだ。
【解説】
亨(水谷豊)が、明美(関根恵子)のヒモとして生活している。
言葉には出さないが、修(萩原健一)はあまり面白くない。
辰巳(岸田森)も、その話を聞くと、「珍奇だ!」と言い切ってしまう。
このエピソードで、二人の住んでいるペントハウスを、
綾部貴子(岸田今日子)から無料で借りていることがわかる。
ジュータンバーのために、二人とも寝る場所が無くなってしまい、
綾部探偵事務所に転がり込んでしまうのがおかしい。
救いの無いラストは、いかにも市川森一脚本。
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昭和50年2月15日(土)放映
第20話「兄妹に十日町小唄を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 伊藤めぐみ | 五代勝也 |
太田美緒 | 倉田悦之 | 藤竹修 | 久田尚美 | 倉田幸子 |
犬塚弘(藤田) | 島田多江 | 渡辺篤史(源さん) | | |
【物語】
修(萩原健一)と亨(水谷豊)のペントハウスの前に、赤ん坊が捨てられていた。
困った修は、その赤ん坊を、小児科医の前に置き去りにしようとする。
院長の藤田(犬塚弘)は、修達の話を聞き、赤ん坊を病院の跡継ぎにと考えた。
だが、親がわからなければ話が進まない。
そこで探偵事務所に親捜しを依頼する。
【解説】
赤ん坊をめぐって、修(萩原健一)達の知りあいの源さん(渡辺篤史)兄妹の物語が描かれる。
辰巳(岸田森)は、このエピソードでもっぱらギャグ担当。
捨て子というトラブルが、親探しの依頼というビジネスになった途端、修たちを柄にもなく褒めまくる。
赤ん坊の世話を押し付けられて閉口するが、最後には情が移ってしまうのが可笑しい。
物語が悲劇に終わったとき、辰巳は報告書をうまく仕上げ小児科の医院長に渡すという、人間味のある所をみせた。
冒頭の修の夢のシーンで、岸田森が時代劇の岡っ引きのような風体で登場するという悪乗りシーンがある。
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昭和50年2月22日(土)放映
第21話「欲ぼけおやじにネムの木を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 根岸一正 |
笠井うらら | 田中りよこ | 下川清子 | 並木静夫 | 峰洋子 |
八木和子 | 武藤章生 | 亀渕友香 | 内田朝雄(松本吉次郎) | |
【物語】
修(萩原健一)と亨(水谷豊)は、土地成金、松本吉次郎(内田朝雄)の裏預金を探れと命令された。
吉次郎は、すでにもうろくしてしまい、預金のことはすっかり忘れていた。
判ったことは、吉次郎の三人の息子が、預金を狙っているということだけだった。
【解説】
工藤栄一監督の悪ノリエピソード。
内田朝雄のぼけ老人に振り回される人々を描く。
辰巳(岸田森)は、裏預金をくすねようと奮闘するが、最後には一銭にもならず、くたびれ儲けに終わってしまう。
乱闘でボコボコにされ痣だらけ、しかも、亨(水谷豊)や修(萩原健一)にすらバカにされてしまうのが楽しい。
劇中、亨と修が見ている映画『激動の昭和史 沖縄決戦』は岸田森が出演した映画。
巨大な映画の看板は、このエピソードのためにわざわざ作り上げられたものだが、
スタッフ、キャストがでたらめ。
しかも実際に上映されている映画は『連合艦隊司令長官 山本五十六』(昭和431968 年)のものだった。
多分、岸田森の出演を意識したものだろう。
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昭和50年3月1日(土)放映
第22話「くちなしの花に別れのバラードを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 家弓家正 |
浅倉一 | 記平佳枝 | 川口節子 | 柏木良司 | 河合良子 |
尾崎八重 | 小梅とよこ | 佐古雅美 | 栗原希世子 | 久保明(瀬川) |
篠ヒロコ(葉子) | | | | |
【物語】
華道藤宮流の家元、葉子(篠ヒロコ)は両親を亡くしたばかり。
その上、事故で体が不自由だった。
そこに付け込んで家元の座を狙う理事長は、長男との結婚話を強引に進めた。
見かねた事務員の瀬川(久保明)は、修(萩原健一)と辰巳(岸田森)に家元誘拐を依頼。
結婚式場からの連れ出しに成功する。
しかし、匿っていたペントハウスから葉子は連れ去られ、依頼も打ち切られてしまった。
全ては瀬川の仕組んだものだったのだ。
【解説】
辰巳(岸田森)と修(萩原健一)は、車椅子の家元、葉子(篠ヒロコ)に同情する。
どことなく優雅で上品な彼女に、二人は恋に落ちた。
辰巳は、意味もなく葉子の匿われている修達のペントハウスに入り浸る。
しかし、辰巳たちの不注意から葉子が連れ去られ、その上依頼が打ち切られると、辰巳は非情にも捜査を打ち切ってしまう。
修はその態度を罵るが、辰巳は自分の立場上、どうしても二人のように無鉄砲に飛び出すことは出来ない。
だが、探偵事務所自体が騙された事がわかった途端、辰巳は水を得た魚のように動き始める。
犬猿の仲の修達と手を組み、自分たちを騙した瀬川(久保明)から、葉子を取り返す。
葉子は、自由を求め修達と一緒に生活をしようと考えるが、結局は家元になり、手の届かない所へ行ってしまう。
失恋した修と辰巳の二人は、何故か悲しくフォークダンスを踊って終わる。
岸田森の、計算された絶妙な芝居が堪能できる一編だ。
関連作品
雑誌記事 「ハ〜イお疲れさま!
『傷だらけの天使』(日本テレビ)
篠ヒロコのお尻をなでては岸田森ニヤニヤ」(昭和50年1975)
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昭和50年3月8日(土)放映
第23話「母の胸に悲しみの眠りを」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 西尾三枝子 |
ホーン・ユキ(浅川京子) | 本山可久子 | 加藤土代子 | 村上幹夫 | 鈴木英介 |
瞳恵子 | 有栖川ゆうこ | 野口すみえ | 石川隆生 | 根上淳(中岡光太郎) |
下條アトム(中岡光一) | | | | |
【物語】
身重の女子工員チャコが死に、自殺と断定された。
チャコの母は、自殺とは信じられずに、綾部探偵事務所に調査を依頼してきた。
修(萩原健一)と亨(水谷豊)は、工場長の息子、中岡光一(下條アトム)が怪しいと睨み、調査を開始。
二人はさっそく暴漢に襲われる。
二人を襲って来たのは、思った通り光一だった。
傷だらけの二人を見て、辰巳(岸田森)は非情にも狙い通りと喜ぶ。
だが、工場の重役候補である光一の父、光太郎(根上淳)は、息子のためにこの件を金で片を付けようとする。
事件は、光一が自殺に見せ掛けて殺したのではないかという疑いがますます深ったが、真犯人は別にいた…
【解説】
自分の出世のためには、息子の死も仕方がないと言い切ってしまう父親、
その父親をかばって死んでいった息子。
修(萩原健一)はそんな二人をみて、調査報告書に嘘の事を書いてしまう。
今回の岸田森は、社長の綾部(岸田今日子)の前でミスを犯した時、ステッキで責め立てられる。
いつも修たちには非情にふるまっているが、社長にはまったく立場が完全に逆転。
この二面性を、同じエピソードで見事にこなすのが、岸田森の巧さだ。
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昭和50年3月15日(土)放映
第24話「渡辺綱に小指の思い出を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 真山知子 | ホーン・ユキ(浅川京子) |
天本英世 | 長谷川弘 | 津路清子 | 永谷悟一 | 泉芙美子 |
霞涼二 | 吉田義夫 | 富田仲次郎 | 坂口良子 | 前田吟(大月) |
【物語】
修(萩原健一)は、銀竜会の胴師として賭場に潜入して、いかさまをやれと命令された。
その裏には、銀竜会の信用を落とそうとする金竜会、大月(前田吟)の計画があった。
思った通りに修のいかさまはあっけなく失敗し、小指を詰めさせられてしまう。
だが、十時間以内なら指が、元通りに繋がると知った修は、必死に自分の小指を探す。
【解説】
修(萩原健一)が、背中に「渡辺綱(わたなべのつな)」の入れ墨を入れ(もちろん絵の具)、
ヤクザの賭場に壷振り師として潜入する。
辰巳(岸田森)は、ヤクザたちと甘いものを食べながら
「修の指一本くらいでなんとか済ませて下さい」と、人ごとのように交渉しているのが楽しい。
後に、賭場に客として潜入するが、
顔に傷をつけたりする無意味な変装が、場違感たっぷりで面白い。
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昭和50年3月22日(土)放映
第25話「虫けらどもに寂しい春を」
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | 本田みちこ |
中川三穂子 | 桜井とし子 | 里見たかし | 笠井ひろ | しば早苗 |
野村光絵 | 大島光明 | 北浜昇 | 今井和雄 | 石川隆昭 |
中西江美子 | 根岸明美(弘子) | 水上竜子 | 小松方正 (高山波太郎/小山) | |
【物語】
「物価値下げ運動」の旗手、高山波太郎(小松方正)の愛人、弘子(根岸明美)は、
最近の高山の変化に不安を抱き、貴子(岸田今日子)に相談する。
早速、修(萩原健一)は高山と会う。
しかし、その同じ時に、亨(水谷豊)も高山を目撃していた。
探偵事務所では、二人の高山の出現に混乱を起こす。
【解説】
レギュラー達と相性が良いのか、工藤栄一監督の回は、出演者全員非常に凝った芝居をみせる。
特にレギュラー4人が映るショットでは、全員何らかの小芝居をしていて目が離せない。
ゲストの小松方正が、一人二役を素晴しい芝居で演じきっていた。
ラストで、高山(小松方正)が行う講演会の中に、
「映画監督 工藤栄一」「写真家 加納典暗」の名前が紛れ込んでいる、内輪受けのシーンがある。
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昭和50年3月29日(土)放映
第26話「祭りのあとにさすらいの日々を」(最終話)
【出演】
萩原健一(木暮修) | 岸田今日子(綾部貴子) | 水谷豊(乾亨) | 岸田森(辰巳五郎) | ホーン・ユキ(浅川京子) |
柴田美保子 | 石田太郎 | 畠山麦 | 竹田将二 | 松尾文人 |
杵渕正美 | 浅野謙次郎 | 佐古雅美 | 丘広樹 | 村山憲三 |
森本レオ | 村田ゆき子 | 中原伊緒 | 西雅美 | 土井淳 |
小林和美 | 水本ルミ | 下川辰平 | 西村晃(海津警部) | |
【物語】
修(萩原健一)が事務所を訪ねてみると、警察の家宅捜査を受けた後でもぬけの殻だった。
汚職事件に関っていたらしく、綾部(岸田今日子)達の行方はまったくわからない。
その頃、亨(水谷豊)は、修と田舎で暮らすことを夢見て、風邪を押して無理な仕事をしていた。
そんな時、綾部から修に、偽造パスポートが届く。
修を一緒に連れて国外へ高飛びしたいと言うのだ。
修は、風邪で動けなくなった亨の止めるのを振り切って、一人旅立つ。
しかし、気になって戻ってくると、すでに亨は息絶えていた…。
【解説】
市川森一脚本の、レギュラー全員救いの全く無い最終話。
修(萩原健一)の事を慕う亨(水谷豊)が、あっさり息絶えてしまうのが衝撃的で、余りにも悲しい。
辰巳(岸田森)は、慕っていた綾部社長(岸田今日子)に見捨てらたにも関わらず、
高跳びのための外国船の出港を、遠くから見送くる。
そして、貴子を逮捕しに来た海部刑事(西村晃)を妨害、
映画『望郷』(1937)のジャン・ギャバンを精一杯格好良く演じようとする。
しかし、結局手錠をはめられ、泣き叫びながらみっともなく暴れる。
辰巳らしいラストだった。
短く刈った、独特の髪形で登場しているのに驚かされる。
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