【演劇】


昭和43年6月18日(火)〜7月2日(火)公演


かれら自身の黄金の都市


●六月劇場第三回公演

昭和43年6月18日(火)〜6月25日(火)
東京/俳優座劇場にて上演


●演劇センター68参加公演

昭和43年6月27日(木)
京都/弥栄会館にて上演
昭和43年6月28日(金)〜6月29日(土)
大阪/関電ホールにて上演
昭和43年7月1日(日)
名古屋/CBCホールにて上演
昭和43年7月2日(火)
横浜/スカイ劇場にて上演

演 出津野海太郎アーノルド・ウェスカー小田島雄志


【出演】

岸田森
(アンドルー・コバム)
悠木千帆
(ジェシー・サザランド)
富川K夫
(ポール・ドブスン)
串田和美
(ストーニー・ジャクスン)
草野大悟
(ジェーク・レーサム)
向井義広
(スミシー、テッド・ワーシントン 二役)
稲葉良子
(ケート・ラムジー)
蔵一彦
(都市計画委員長、ビル・マシスン 二役)
橋本陸
(アルフィ・ハリントン)
村松克己
(レジナルド・メートランド)
金子研三
(ブライアン・ケンブリッジ)
    


【物語】

製図工アンドルー(岸田森)は、建築家を志し、壮大な都市の建築を夢見る。
やがて、アンドルーの腕は認められ、望み通り建築家となり、相思相愛のジェシー(悠木千帆)と結婚した。
その後、労働運動に参加、内部の権力闘争などに時間をとられ、
彼の都市計画は、後回しとなってしまい、そのうちに世界大戦が起きてしまう。
戦後、彼は、昔夢を語り合った仲間、
ジャーナリストのポール(富川K夫)、牧師のストーニー(串田和美)を仲間に入れ、
都市計画を再出発しようとした。
平和な家庭を持っている二人は、始めはためらったが、
アンドルーの熱意に引きずり込まれ、「かれら自身の黄金の都市」の建設に関ってゆく。
都市は、労働者が中心となって、大衆が自らの家やレストラン、図書館、劇場、その他の文化地帯と、自らの工場を持つという、夢のような都市だった。
だが、計画は色々な事で、立ち行かなくなる。
それでも、保守党大臣レジナルド(村松克己)や、大資本家のアルフィ(橋本陸)の援助で、
最初の計画の六都市の内、一つだけをやっと完成させることが出来た。
しかし、アンドルーは、苦々しい挫折への悔恨に、怒号を押さえるだけしか出来なかった。



【解説】

イギリスの作家アーノルド・ウェスカーの新作「Their very own and golden city」を、
六月劇場第三回公演として上演。
二幕二十九場という場面転換が多い芝居で、
時間も場面ごとに前後する、非常に複雑な構成である。
だが、脚本は流れるようにうまく構成されており、そのような事はあまり気にならない。
平野甲賀デザインの独特な舞台装置も、スムーズな展開に一役買った。
スライドを使ったり、次の場面が、前の場面に入ってきたりする、映画的な手法が数多く用いられていた。
その中でも特筆すべきは、フラッシュ・バックではなく「フラッシュ・フォワード」という、
話が終わる前に、未来の姿を先に見せる独特の手法を用いている事だ。
主人公アンドルーが、妥協した都市計画に悔しがっている1990年の未来を先に描き、
この黄金の都市計画の行く末を見せてしまうのだ。
作家のウェスカーは、当時ロンドンで、芸術思想運動「センター42」を進めており、
そのために18カ月の間戯曲が書かれていなかった。
最新作「かれら自身の黄金の都市」の都市計画は、この「センター42」運動が色濃く反映している。


【岸田森の役】

アンドルー・コバム

黄金都市という壮大な計画を進める建築家。
労働者たちが全てを行うという、理想の都市の建築に着手し、
数々の障害を乗り越えて、都市を一つ作り上げる事に成功、サーの称号をもらう。
しかし、挫折や妥協も多く、自分の理想の実現が不可能という事が晩年、身にしみて判る。
それでも、物語は絶望では終わらずに、若いころの理想に満ちた姿で終了するようになっていた



関連作品

アーノルド・ウエスカー

調理場(インターリュードのある2部)(昭和38年1963
調理場(インターリュードのある2部)再演(昭和38年1963


六月劇場

B・Bの歌(ブレヒト・オン・ブレヒト)(昭和41年1966
名づけるな、わたしたちに(昭和41年1966

魂へキックオフ(昭和42年1967
審判 銀行員Kの罪(昭和42年1967
夜うつ太鼓 死んだ兵隊の伝説 二幕五場 喜劇(昭和43年1968
魔女傳説(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
魔女傳説(再演)(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
鼠小僧次郎吉(昭和44年1969

「「六月劇場」です=岸田森〈俳優〉」(昭和41年1966
「おとしさんがんばる!劇団を結成した岸田森・悠木千帆夫妻」(昭和41年1966
おじゃまします ただ今6月劇場≠ノ熱中 岸田森(きしだしん)(昭和42年1967










昭和43年12月21日(土)〜12月28日(土)公演


夜うつ太鼓 死んだ兵隊の伝説 二幕五場 喜劇

六月劇場第四回公演
東京/新宿紀伊国屋ホールにて上演
演 出津野海太郎ベルトルト・ブレヒト石黒英男


【出演】

草野大悟(アンドレアス・クラーグラー)青木一子(アンナ・バリッケ)岩淵達治(バリッケ)田上嘉子(バリッケの妻)岸田森(ムルク)
串田和美(バーブッシュ)村松克己
(ピカデリー・バーのマンケ、
赤ぶどうの赤い月のマンケ、 二役)
伊東満智子(アウグステ)稲葉良子(マリー)清水紘治(グルップ)
小野川公三郎(ブルトロッター)樋浦勉(酔っぱらい)西内紀幸(ラール)金子研三(労働者)向山雅彦(新聞売り)
二瓶鮫一(二人の紳士)古川義範(二人の紳士)敦賀岑一(男1)大槻哲郎(男2)悠木千帆(女中)
田島和子(赤いローザ)    


【物語】

ある11月の夜、
アンナ(青木一子)は、ムルク(岸田森)との婚約を決める。
アンナには、以前、結婚を約束していたクラーグラー(草野大悟)という男かいたが、
戦争に出たまま4年も前に、行方がわからなくなっていたのだ。
その日は、政情が不安なために、各地で暴動が続いていた。
ムルクは、町にあるピカデリー・バーで婚約パーティーを開こうと、アンナ共々店へ向かう。
だが、そこに行方不明になっていたはずのクラーグラーが突然現われた。
クラーグラーは、4年の間捕虜生活で、ボロボロの容姿にワニのような肌という変わり果てた姿になっていた。
事情を知って動揺したクラーグラーは、自暴自棄になって、
偶然始まった新聞街の暴動へと飛び込もうとする。
アンナは、止めるムルクを振り切り、クラーグラーの後を追って新聞街へと馬車を飛ばした。


【解説】

1919年にドイツで起きた、
ドイツ共和党(スパルタクス団)の武装蜂起を背景に描かれた、
ベルトルト・ブレヒトの喜劇。
初演は1922年、ミュンヘンで行われている。
暴動が起きそうな緊迫した時に、
行方不明になっていたクラーグラー(草野大悟)が、ひょっこり昔の恋人アンナ(青木一子)の前に姿を現わす。
恋人の行方不明に、アンナは打算的になり、
俗物のムルク(岸田森)に体を許して子供まで出来ていた事で、問題は複雑になる。
二人を取り巻く人物達は、暴動などおかまいなしに怒鳴りあい、気違いじみた憎悪をさらけ出す。
4年の間社会から隔絶していたクラーグラーにとっては、それらは意味のないことだったけれども、
彼女の妊娠を知った時、始めて怒りを露にする。
酒場から持ちだした太鼓が、主人公の怒りを鋭く表し、
ラストでは、主人公によって放り投げられた太鼓が、舞台の仕掛けを壊すという構成になる。
この時、役者と観客の垣根を乗り越えて、怒りは頂点に達するという演出だ。
日本ではこの公演が初演にあたり、昭和43年19681月に日本で初演された
劇団新人会による、ブレヒトの「都会のジャングル」と共に、話題となる。


【岸田森の役】

ムルク

アンナ(青山一子)の婚約者。
行方不明になっているクラーグラー(草野大悟)の事は気にしてはいたが、
それでもアンナと結婚することにする。
20年近く屋根裏部屋で過ごす貧困生活をしていたが、戦争でにわか成金になった。
アンナの両親は結婚を祝福し、全てがうまく行こうとしていた時、
クラーグラーが現われてしまったために、話がおかしくなってくる。
あせったムルクは、クラーグラーを、下品に口汚くののしり続ける。

作者は、ムルクを、ブルジョア(資本家)の象徴として描き、
プロレタリア(賃金労働者)に攻撃される対象として描いた。
しかし、その攻撃される側だったブルジョア階級に、芝居が大受けしてしまったので、実に複雑な気分だったという。


関連作品

六月劇場

B・Bの歌(ブレヒト・オン・ブレヒト)(昭和41年1966
名づけるな、わたしたちに(昭和41年1966

魂へキックオフ(昭和42年1967
審判 銀行員Kの罪(昭和42年1967
かれら自身の黄金の都市(昭和43年1968
魔女傳説(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
魔女傳説(再演)(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
鼠小僧次郎吉(昭和44年1969

「「六月劇場」です=岸田森〈俳優〉」(昭和41年1966
「おとしさんがんばる!劇団を結成した岸田森・悠木千帆夫妻」(昭和41年1966
おじゃまします ただ今6月劇場≠ノ熱中 岸田森(きしだしん)(昭和42年1967






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