【演劇】


昭和44年3月7日(金)〜3月13日(木)公演


魔女傳説

劇団自由劇場第11回公演
東京・新宿朝日生命ホールにて上演
演 出観世栄夫福田善之


【出演】

渡辺美佐子(管野スガ)岡村春彦(行徳伝三郎)広瀬昌助(新納忠雄)串田和美(宮口太市)山谷初男(古賀力策)
浅川鮎子(諸岡千代子)伊東満智子(岡田テル子)樋浦勉(同志1)村松克己(同志2)清水絋治(同志3)
稲葉良子(女の同志)湯浅實(検事甲)佐藤博(検事乙)岸田森(検事丙)望月通治(青年)
中村方隆(法学士)溝口舜亮(外伝係)和田周(相撲記者)  


【物語】

明治42年、
天皇に爆裂弾を投げつけ、謀殺しようと企んだという容疑で、
行徳伝三郎(岡村春彦)以下25名が逮捕された。
社会思想運動を弾圧したい検事達は、この事件を行徳たち一派の殲滅に利用しようと、
なんとか共同謀議だったというふうに話を進めようとする。
しかし、書生の新納(広瀬昌助)が、伝三郎の愛人スガ(渡辺美佐子)の事を頑固にかばうので、取り調べは進展しない。

検事の一人(岸田森)は、真実を見極めたくて、他の検事たちと違う取り調べをする。
千代子は、夫、行徳が捕まる少し前に離婚した。
だが、その後すぐに、スガと行徳は一緒に住むようになる。
この噂は瞬く間に広がり、納得できない同志たちは一人、また一人と行徳のまわりから離れてゆく。
そして、同志達の中から、行徳を裏切る人物が現われ始めた。


【解説】

演劇センター運動で、後に六月劇場と共に参加することになる劇団自由劇場の公演に、岸田森が参加したもの。
六月劇場の芝居
『夜うつ太鼓』 『かれら自身の黄金の都市』(共に昭和421967年)にも、自由劇場の串田和美らが参加していて、交流か盛んだった。

ちなみに、この芝居は、昭和431968年12月13日(金)〜12月23日(月)、昭和441969年1月15日(水)〜1月31日(金)にも、
東京・アンダーグラウンド自由劇場で公演されているが、
これらは、六月劇場の『夜うつ太鼓』(昭和431968年)と、スケジュールがぶつかっているので、岸田森は出演していないと思われる。

明治42年に起きた大逆事件を題材に採って、
当時の学生運動や、紛争などが多発した世相とダブらせて描いた、非常に政治色の強い舞台。
取り調べ中に、過去の情景が演じられたり、数人の取り調べがいっぺんに舞台上で演じられたりと、複雑な構成で描かれていた。

大逆事件とは、無政府主義者が、明治天皇暗殺を計画したという理由で処刑された事件。
首謀者とされる幸徳秋水は、計画に直接関係がなかったが、
社会主義者を葬ろうという政府の方針にしたがって、首謀者と見なされて処刑された。
幸徳事件とも呼ばれている。


【岸田森の役】

検事丙

行徳伝三郎(岡村春彦)の取り調べを担当している検事。
インテリで、行徳らを陥れようとする取り調べには、抵抗を感じている。
行徳の本当の動機を知りたくて、仲間の検事たちとは違った取り調べを続ける。
そして、行徳の口から、スガが魔女ではなかったのかと聞いたとき、満足して検事を辞める。
融通の利かない他の検事達と違い、小説家志望の青年に、好意で調書を見せたりする。
ちなみにこの小説家志望の青年は、石川啄木の若い頃ををモデルにしたキャラクター。


関連作品

六月劇場

B・Bの歌(ブレヒト・オン・ブレヒト)(昭和41年1966
名づけるな、わたしたちに(昭和41年1966

魂へキックオフ(昭和42年1967
審判 銀行員Kの罪(昭和42年1967
かれら自身の黄金の都市(昭和43年1968
夜うつ太鼓 死んだ兵隊の伝説 二幕五場 喜劇(昭和43年1968
海賊(二幕)(昭和44年1969
魔女傳説(再演)(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
鼠小僧次郎吉(昭和44年1969

「「六月劇場」です=岸田森〈俳優〉」(昭和41年1966
「おとしさんがんばる!劇団を結成した岸田森・悠木千帆夫妻」(昭和41年1966
おじゃまします ただ今6月劇場≠ノ熱中 岸田森(きしだしん)(昭和42年1967










昭和44年6月21日(土)〜6月26日(木)公演


海賊(二幕)

六月劇場第五回公演
東京/新宿紀伊国屋ホールにて上演
演 出佐伯隆幸山元清多


【出演】

草野大悟(マサ)岸田森(キチ)村松克己(辰)金子研三(ひろし)小野川公三郎(保)
秋吉信夫(バイト屋)西内紀幸(貨物船)朝比奈尚行(高木)悠木千帆(女1)石井くに子(女2)
稲葉良子(高木の女)    


【物語】

汚れきって、腐臭を発しているような川沿いにある工場、
そこに住むマサ(草野大悟)、キチ(岸田森)、辰(村松克己)、ひろし(金子研三)、保(小野川公三郎)達は、
皆一様に憎悪を投げ合ったり、悪ふざけをして日々過ごしている。
そして、それぞれその日の生活をこなして行こうと必死にあがいていた。

そんなある日、以前の仲間だった高木(朝比奈尚行)が、工場に盗みに入る。
しかし、吠えかかる犬を殴り殺してしまい、気づいた皆に押さえ付けられた。
マサは高木を見逃そうとする。
その時、犬を殺されて怒り狂った保が、手製のピストルを持ちだして、高木を撃とうとした。
仲間達が止めようともみ合っているうちに、誤って弾はマサに当ってしまう。
慌てた高木は、一旦は川に飛び込んで逃げようとしたが、
その汚さにためらい、自ら再び、工場へと戻ってきてしまうのだった。


【解説】

六月劇場第五回公演用に、山元清多が書き下ろした作品。
汚れきって、腐臭を発する隅田川の近く、川向こうと呼ばれる場所に建つ工場を舞台に、
愛憎半ばする登場人物が織りなす群衆劇を描く。
物語の中で、隅田川が重要な役割を負わされており、
嫌な匂いを発する混沌とした敵意と、昔は泳ぐことが出来た、遠い昔の純粋だった頃の二重のシンボルとなっている。

この芝居は、始めは「隅田川デルタ・ファンタジー」という題名で構想されていたらしいが、
「海賊」という、不思議な題名は津野海太郎が決めたという。

ラストの幕切れは、幕ではなく、紀伊国屋の防火シャッターを直接下ろして終了させるという、過激な演出だった。
しかし、これは劇場側から、当然クレームがつき、
この公演だけということで、特別に許可された。
この作品が、六月劇場の単独公演としては、最後の作品。


【岸田森の役】

キチ

工員の一人。
手が早く、ナイフで襲われそうになっても、冷静に対処していた。
背中一面に入墨を入れている所をみると、以前はチンピラだったのかもしれない。
なれ合いで愛憎する工員達を、一歩退いたところから見ているような所がある。
高木(朝比奈尚行)が、工場から一度飛び出しても、
結局同じ穴のムジナで終わってしまうのを見て、この場所からの脱出を決意する。
非現実の世界と、現実の世界を結び付けるキーになるキャラクター。


関連作品

山元清多

帰ってきたウルトラマン 第35話「残酷!光怪獣プリズ魔」(昭和46年1971
ウルトラマンA(エース)第47話「山椒魚の呪い!」  (昭和48年1973 (「昭和47年声の仕事」ページに収録)
「ドキュメンタリードラマ 太平洋の生還者」    (昭和51年1976
夜のミステリー(江戸川乱歩短編ドラマ)(昭和51年1976
夜のミステリー(深夜版)第11話「連動」(昭和52年1977
ドラマ「下駄の上の卵」  (昭和56年1981
特別番組「普陀洛の岸辺」  (昭和56年1981


六月劇場

B・Bの歌(ブレヒト・オン・ブレヒト)(昭和41年1966
名づけるな、わたしたちに(昭和41年1966

魂へキックオフ(昭和42年1967
審判 銀行員Kの罪(昭和42年1967
かれら自身の黄金の都市(昭和43年1968
夜うつ太鼓 死んだ兵隊の伝説 二幕五場 喜劇(昭和43年1968
魔女傳説(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
魔女傳説(再演)(昭和44年1969
鼠小僧次郎吉(昭和44年1969

「「六月劇場」です=岸田森〈俳優〉」(昭和41年1966
「おとしさんがんばる!劇団を結成した岸田森・悠木千帆夫妻」(昭和41年1966
おじゃまします ただ今6月劇場≠ノ熱中 岸田森(きしだしん)(昭和42年1967











昭和44年7月10日(木)〜8月6日(水)公演


魔女傳説(再演)

劇団自由劇場公演

昭和44年7月10日(木)
大阪厚生年金会館中ホールにて上演
昭和44年7月11日(金)
京都祇園・弥生会館にて上演
昭和44年7月12日(土)
彦根市民会館にて上演
昭和44年7月14日(月)
横浜スカイ劇場にて上演
昭和44年8月1日(金)〜8月6日(水)
六本木俳優座劇場にて上演

演 出観世栄夫福田善之


【出演】

渡辺美佐子(管野スガ)岡村春彦(行徳伝三郎)広瀬昌助(新納忠雄)串田和美(宮口太市)山谷初男(古賀力策)
浅川鮎子(諸岡千代子)伊東満智子(岡田テル子)樋浦勉(同志一・岡田)村松克己(同志二・戸川)清水絋治(同志三・山本)
稲葉良子(女の同士・蟹川)中川謙二(大西誠之助)溝口舜亮(奥中欣治)林明夫(検事甲)佐藤博(検事乙)
湯浅實(検事丙)望月通治(青年)中村方隆(法学士)和田周(相撲記者)岸田森(声)


【物語】

明治42年、
天皇に爆裂弾を投げつけ、謀殺しようと企んだという容疑で、
行徳伝三郎(岡村春彦)以下25名が逮捕された。
社会思想運動を弾圧したい検事達は、この事件を行徳たち一派の殲滅に利用しようと、
なんとか共同謀議だったというふうに話を進めようとする。
しかし、書生の新納(広瀬昌助)が、伝三郎の愛人スガ(渡辺美佐子)の事を頑固にかばうので、取り調べは進展しない。

検事の一人は、真実を見極めたくて、他の検事たちと違う取り調べをする。
千代子は、夫、行徳が捕まる少し前に離婚した。
だが、その後すぐに、スガと行徳は一緒に住むようになる。
この噂は瞬く間に広がり、納得できない同志たちは一人、また一人と行徳のまわりから離れてゆく。
そして、同志達の中から、行徳を裏切る人物が現われ始めた。


【解説】

昭和44年3月に上演された
『魔女傳説』を再上演。
劇団自由劇場が、演劇センター運動に参加して、単独の劇団活動が一時期休止する直前に行われた。
この公演は、地方公演も行われており、
スケジュール的にも岸田森の参加が難しかったために、声のみの出演となったのだろうと思われる。


【岸田森の役】



状況を説明したりするナレーション。


関連作品

六月劇場

B・Bの歌(ブレヒト・オン・ブレヒト)(昭和41年1966
名づけるな、わたしたちに(昭和41年1966

魂へキックオフ(昭和42年1967
審判 銀行員Kの罪(昭和42年1967
かれら自身の黄金の都市(昭和43年1968
夜うつ太鼓 死んだ兵隊の伝説 二幕五場 喜劇(昭和43年1968
魔女傳説(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
鼠小僧次郎吉(昭和44年1969

「「六月劇場」です=岸田森〈俳優〉」(昭和41年1966
「おとしさんがんばる!劇団を結成した岸田森・悠木千帆夫妻」(昭和41年1966
おじゃまします ただ今6月劇場≠ノ熱中 岸田森(きしだしん)(昭和42年1967








昭和44年10月29日(水)〜11月30日(日)公演


鼠小僧次郎吉

演劇センター68/69長期連続公演

昭和44年10月29日(水)〜11月2日(日)
昭和44年11月10日(月)〜11月16日(日)
昭和44年11月24日(月)〜11月30日(日)
アンダー・グラウンド・シアター自由劇場にて上演(22回)

演 出佐藤信佐藤信


【出演】

藤原マキ(へへ)伊東満智子(そそ)河内美子(ぼほ)岸田森(鼠の一番)広瀬昌助(鼠の二番)
清水絋治(鼠の三番)三好道明(鼠の四番)小川真由美(鼠の五番)西内紀幸(門番) 


【物語】

「あさぼらけの王」の御神体を、鼠小僧次郎吉が盗むという予告があった。
御神体を守る門番(西内紀幸)は、大慌てする。
その頃、地上では、女郎ジェニイ(小川真由美)が出産していた。
男を生みたいと、流れ星に願いをかけたが、結局は女の子だった。
失望したジェニイは、自殺しようとさまよう。
そこで、農業演劇を研究している男(三好道明)と出会った。

その男も偶然流れ星に、願いをかけており、
お互いに、左目の瞳に小さな星が出来ていた。
運命的な物を感じた二人は、そのまま心中することにする。

だが、剣でいくら突いても、首を絞めても二人は死ねなかった。
ボロボロになりながらさまよっていった先で二人は、
三人の男達(岸田森、広瀬昌助、清水絋治)と出会う。
この三人とも、瞳の中に星があった。
流れ星に願をかけていたのだ。
流れ星は、大江戸にその名の高い、大鼠の仮の姿、つまり鼠小僧次郎吉だった。



【解説】

「六月劇場」「自由劇場」「発見の会」という、3つの劇団が主になった
「演劇センター68/69」の活動の一つ「拠点演劇」を実行に移した作品。
この公演の成功で、作者の佐藤信は、紀伊国屋演劇賞を受賞する。

一つの劇場を拠点に、ほぼ7日ごとのサイクルで、
三人から六人の新しい作家による書き下ろし戯曲を、できるだけ長期に渡って続けてゆこうとした。
最初は、『バーディ・バーディ(山元清多作)』『トラストD・E(斉藤憐作)』と、この『鼠小僧次郎吉』の三本が交互で公演されている。

このシステムの利点は、観客の反応を見ながら、作品の練り直しが利くということで、
最初に上演されたこの三本全て、後に書き直されている。
特に、この「鼠小僧次郎吉」は、数カ月おきに全面改稿され、
『浮世混浴鼠小僧次郎吉 二の替り・夜嵐浴場版(昭和451970年1月22日初演)』
『陰画絵本鼠小僧次郎吉 三の替り・極付発狂版(昭和451970年4月22日初演)」と変更された。

しかし、利点ばかりではなく欠点も多かった。
人気の出てきた役者を半年近くも出演させ続けるのは困難で、
文学座と掛け持ちだった小川真由美や、テレビで売れていた岸田森等、
全てに出演できない役者が続出する。
また、いままでの芝居のように、短期集中型の宣伝が出来なくて、
観客も始めてのシステムに戸惑い気味であった。
観客動員には成功したが、客の入りにはムラがあったという。

ちなみに、この作品の上演方法が複雑なために、メディアによって、上演日が違っている。
ここでは、演劇センター68/69が発行した「68/69 No.2」に拠った。


【岸田森の役】

鼠の一番

戯曲者。
劇中重要な役割を果たす本「自由の騎士・火の玉ジョオジ」の作者。
流れ星(実は鼠小僧次郎吉)に、「この生活が変りませんように」という願いをかけたために、
5人の鼠小僧の中の一人となってしまう。
物を見つける才能にたけているが、
いつも蕪(かぶら)を発見するだけにしか使っていなかった。


関連作品

六月劇場

B・Bの歌(ブレヒト・オン・ブレヒト)(昭和41年1966
名づけるな、わたしたちに(昭和41年1966

魂へキックオフ(昭和42年1967
審判 銀行員Kの罪(昭和42年1967
かれら自身の黄金の都市(昭和43年1968
夜うつ太鼓 死んだ兵隊の伝説 二幕五場 喜劇(昭和43年1968
魔女傳説(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969
魔女傳説(再演)(昭和44年1969
海賊(二幕)(昭和44年1969

「「六月劇場」です=岸田森〈俳優〉」(昭和41年1966
「おとしさんがんばる!劇団を結成した岸田森・悠木千帆夫妻」(昭和41年1966
おじゃまします ただ今6月劇場≠ノ熱中 岸田森(きしだしん)(昭和42年1967









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