【テレビ作品】


昭和38年6月7日(金) 放映


文芸劇場

「小指」


NHK総合放映 
20時00分〜21時00分(60分)白黒作品
演 出館野昌夫原 作堤千代脚 本八木隆一郎




【出演】

十朱幸代(染子)岸田森(岩田)三津田建宮口精二北村和夫
賀原夏子    



【物語】


染子(十朱幸代)は芸者置屋「新中河」の売れっ妓であった。
ある日、復員してきた客で病院長の大森がやってくる。
大森は、自分の病院に入院している、岩田行雄中尉(岸田森)という人物を慰問してほしいと、染子に頼んだ。
岩田は、戦場で受けた傷がもとで、
明日、両腕を切り落としてしまうというのだ。
女性に手も触れたことが無い岩田が、
手術の前に、一度でも女性の手に触れたいという願いをかなえてやってほしいというのだ。


【解説】


文芸劇場は、NHKが放映していた1時間枠の単発ドラマ。
文学座からも出演が多く、
岸田森は文学座員という形でドラマに参加している。
昭和38年1963 6月に放映された4本の文芸劇場は、
原作を直木賞受賞作品から選んでおり、「小指」はその第一弾。
十朱幸代も岸田森もNHKは初出演だった。

岸田森にとっては初の大役だったが、
知名度がまだなかったせいか、番組紹介では「岸田」と誤植されているものがある。



【岸田森の役】

岩田行雄中尉

戦争のために両腕を切り落とすことになる若い軍人。








昭和38年7月21日(日)放映


東芝日曜劇場

「星形」



TBSテレビ放映 
21時30分〜22時30分(60分)白黒作品
演 出久野浩平原 作曽野綾子脚 本植草圭之助


【出演】

南田洋子(木下郷子)渡辺文雄(木下孝雄)明石良(繁)下川辰平(岩山)藤田二三夫(北条)
岸田森(谷口青年)    


【物語】


ある休日、郷子(南田洋子)は、夫(渡辺文雄)との外出を楽しみにしていた。
しかし、その当日に来客があり、
夫はそのお客さんたちと麻雀を始めてしまった。
結婚前は知的だった夫が、俗物のようになってしまったのを感じて、
郷子は惨めさに泣き出してしまう。
失意の郷子は、やむなく昼食の材料を買いに出た。
その時、同じアパートの一階上に住む青年(岸田森)に声をかけられ、
ついフラフラと青年の部屋へと入ってしまう。
青年は、慰めるように話かけるが、突然襲い掛かり郷子は唇を奪われてしまう。
甘い逆上をする郷子だったが、
その時部屋の隅に、夫が愛読しているのと同じ、低俗な週刊誌を発見して、うんざりしてしまう…


【解説】


昭和31年1956 から放映されている単発ドラマシリーズ「東芝日曜劇場」の中の一本。
どこにでもある平凡な中流サラリーマン家庭に影を落す、
倦怠と老いを乗り越えてゆく様子を描く、
曽野綾子原作の同名小説のドラマ化。
「星形」とは、主人公達が住む、同じような星型のアパートの群の事を指す。
余談だが、この放送の裏番組として、
岸田森が出演していた文学座の舞台
「トスカ」の中継が放映されている。
(NHK教育、21時00分〜23時00分、白黒)


【岸田森の役】

谷口青年

主人公郷子(南田洋子)と、同じアパートの住人。
郷子に巧みに声をかけて、自分の部屋へと招き入れてしまう。
神官の卵で、
ギターを弾いたり、人生の無常について語ったりと、知的なところを見せるが、
結局はポーズだけで、俗物タイプであった。
老いを感じている郷子と対比する、物語のキーになる役。
文学座の分裂事件以降、重要な役に続々と起用されたのがわかる役。


関連作品

東芝日曜劇場

東芝日曜劇場 「橋の下」  (昭和39年1964
東芝日曜劇場 女優シリーズ14 「サファイヤ・ミンク」  (昭和39年1964
東芝日曜劇場 第835回「−茶の花匂う−より あによめ」  (昭和47年1972









昭和38年10月25日(金)放映


近鉄金曜劇場

芸術祭参加作品 「正塚の婆さん」



TBSテレビ放映 
19時30分〜20時56分(86分)白黒作品
演 出大山勝美高橋一郎鴨下信一村木良彦実相寺昭雄久世光彦脚 本橋本忍


【出演】

三益愛子(おくに)多々良純岸田森小山源喜渡辺富美子
北見治一志摩靖彦宮部昭夫日下武史永山一夫
坂井すみ江大坂志郎加茂良子丸山博一新克利
加藤澄江荒井宏京塚昌子田中明夫田武謙三
安達国晴玉川伊佐男堺佐千夫稲野和子常田富士男
中山克己草野大悟月森一蔵小山弓新井さやか
小松方正有田紀子菅井きん宮口精二山形勲


【物語】


町内に聞こえた意地悪のおくに婆さん(三益愛子)は、
裁判所から検察審査会の審査員に任命される。
審査員は十人。
事件は、日雇いおばさんの家がヤクザにたたき壊された事件だった。
だが、事件は、高校誘致にからむ汚職事件にまで発展してしまう。
始めは嫌がらせをするチャンスとほくそ笑んでいたおくに婆さんも、
人々の裏の醜さに直面して、正義を守る堅い信念が沸いてきた。


【解説】


脚本を担当している橋本忍は、
『私は貝になりたい』で昭和33年1958 度芸術祭賞受賞、
『いろはにほへと』で昭和34年1959 芸術祭賞を受賞。
映画では黒澤明監督作品などでも有名である。
また、演出を担当する大山勝美も、
昭和37年1962 度に『若ものー努の場合ー』で
芸術祭奨励賞を受賞した事があるという、万全の布陣で臨んだ作品だ。

「われわれ日本人は、普段は政治にあまり関心を持っていないが、
おくに婆さんのように政治を正しく動かす力は持っているのです。
そのことをこのおばあさんに象徴させて描いた」と大山ディレクターが語る通り、
日本の民主主義の実態と、日本人の政治意識を解明しつつ、
現代の日本人を政治から遠ざけるものの正体をえぐるドラマである。
裁判員制度が開始されている今現在にこそ、
放映したほうがよいのではないかという作品だ。
本来、この放映枠は1時間なのだが、
橋本忍を起用した芸術祭参加との事で、この作品に限って30分延長された。

メインの演出は大山勝美が担当している。
しかし、クレジットを見ると、
大山勝美より文字の大きさが小さいものの、
高橋一郎、鴨下信一、村木良彦、実相寺昭雄、久世光彦という後の大物ディレクターの名前が
「演出」としてクレジットされていたので、
この項のスタッフ欄には全員の名前を載せてある。
後に岸田森と組んで傑作を多数発表することになる実相寺昭雄は、
このときの岸田森の印象を、「猿みたいだった」とエッセイで語っている。

ちなみに、「正塚(しょうつか)の婆さん」とは、
閻魔様の手下で三途の川の河原に座り込み、
気味悪い顔で六文の金を渡さないと三途の川を渡さないと頑張っている婆さんのこと。

この作品は、芸術祭参加作品として金曜劇場枠で放映され、
昭和38年1963 度芸術祭奨励賞を受賞している。


【岸田森の役】

絹川利行

おくに婆さん(三益愛子)と共に選ばれた
検察審査会の審査委員の一人で、一番の若手。
学生で23才。
十人の中で、一番論理的に事件を分析する。
おくに婆さんに、息子に近い年齢という事もあり気に入られ、家にまで招かれるようになる。
一人、事件の核心に迫ろうとするおくに婆さんに、同志と思われるほど信頼される。
しかし、結局はおくにのやり方が理解できずに、最後にきつい言葉を投げかけてしまう。
物語のキーになる、かなり重要な登場人物を演じている。


関連作品

高橋一郎

近鉄金曜劇場 「剣」     (昭和39年1964
きんきらきん 第11回   (昭和44年1969
美作ノ国 吉井川      (昭和47年1972
白い影 第14回(最終回) (昭和48年1973
夢のあとに 第1回〜第3回 (昭和53年1978


実相寺昭雄

怪奇大作戦 全26話  (昭和43年1968
『帰ってきたウルトラマン』第28話「ウルトラ特攻大作戦」 (昭和46年1971
曼陀羅  (昭和46年1971
  (昭和47年1972
シルバー仮面ジャイアント(昭和47年1972
あさき夢みし  (昭和49年1974
歌麿 夢と知りせば   (昭和52年1977

CM演出「S&Bスナックチップ」 (昭和52年1977
CM企画「S&B」スナックトースト野球篇」 (昭和53年1978
CM企画S&Bスナックトースト 外野フライ篇 (昭和54年1979


近鉄金曜劇場

近鉄金曜劇場 「結婚」(前後編)(昭和37年1962
近鉄金曜劇場「剣」(昭和39年1964









昭和38年12月7日(土)放映


テレビ指定席

「魚住少尉命中」



NHK総合放映 
20時00分〜21時00分(60分)白黒作品
演 出吉田直哉脚 本横光晃


【出演】

中尾彬(魚住少尉)宮部昭夫伊吹友木子睦五郎結城美栄子(魚住少尉の恋人)
有川博(回天魚雷隊員)岸田森(回天魚雷隊員)鈴木正勝(回天魚雷隊員)川崎巌楳崎博規
丸山持久上青木浩一浦野かほる浜田晃平野淳之助(ナレーション)


【物語】


終戦間際、昭和20年8月。
アメリカ艦船攻撃のために組織された回天特別攻撃隊、
いわゆる人間魚雷に魚住少尉(中尾淋)は、自ら志願した。
仲間と共に発射された魚住少尉は、真っ暗な海をたった一人で突き進む。
敵艦までの30分という想像を絶する長い時間、
少尉は次々と色々な事を思い考え、葛藤してゆく。


【解説】


人間魚雷回天の特攻隊員の手記をもとに、
彼らが死に直面していたとき、暗い海の中で何を考えて敵艦に突進していったかを描き出す
ドキュメンタリー風ドラマ。
企画演出を担当している吉田直哉は、
「現代の記録」「日本の素顔」で国際賞を受賞しているドキュメンタリー作品のベテラン。
本作品がドラマ初演出となる。
この作品の後には、大河ドラマ「太閤記」などで斬新な手腕を発揮してゆく。

中尾彬の回天が発射されてからの後半30分は、
そのままドラマの進行時間と合わせ、
画面からは主人公の脳裏に浮かんだイメージ、
スピーカーからは主人公の思い出した親兄弟、恋人の言葉、主人公のモノローグが流れてくるように構成されていた。

回天の内部がセットであるほかはオールロケで、
潜水艦のシーンは海上自衛隊の「くろしお」で撮影されている。



【岸田森の役】

木村

魚住少尉と同じ攻撃に参加する四人の回天特攻隊員の内の一人。
両親は空襲で死去。
攻撃前夜、不安にかられ深夜、甲板に独りたたずむ繊細な性格。
搭乗予定だった回天の故障で出動出来ず、
潜水艦内で魚住少尉の特攻成功を祈る。



関連作品

源義経 第1話〜第4話(昭和41年1966






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