【映画】


昭和49年2月9日(土)公開


鬼輪番

東宝=国際放映製作東宝配給
上映時間86分カラー作品 ワイド
監 督坪島孝原 作小池一雄やまさき拓味脚 本小川英石川孝人


【出演】

近藤正臣(渦彦)峰岸隆之介(地虫)水谷豊(吹豆)荒牧啓子(小法師)高峰圭二(六地蔵)
岸田森(玄海)大木正司(影丸)森山周一郎(親鬼)福山象三(四海波徳兵衛)大堀早苗(忍者(女))
石立和男(忍者)北川陽一郎(番頭)鮎川浩(娼家主人)上野山功一(音丸)木村博人(親鬼)
久本昇(親鬼)菊地正孝(親鬼)桐島好夫(親鬼)橋本準(木根次)鈴木和夫
高麗ゆきえ(女郎)仁内真知子(女郎)南黎(貝女)佐藤慶(横笛将監)藤巻潤(祝十兵衛)


【物語】

泰平の世と言われた徳川時代ではあったが、
幕府は謀反を企てる大名を、秘密理に壊滅させるために「鬼輪番」という忍者組織を持っていた。
修業の終わった五人の若い鬼輪番達に、紀州藩が不穏な動きをしているので調査せよという任務が与えられる。
だが、紀州藩には、鬼輪狩りと異名をとる切れ者の目付、横笛将監(佐藤慶)がいた。
五人は二手に別れて、紀州藩に潜伏する。
しかし、里隠れの鬼輪番、玄海(岸田森)の密告で次々と捕まってしまう。
罠にはまった渦彦(近藤正臣)も生き埋めにされてしまうが、玄海によってこっそり助け出された。
玄海は将監を欺いていたのだ。
だが、それに感づいていた切れ者の将監は、玄海を殺害、潜入していた小法師(荒牧啓子)を捕らえた。
たった一人、潜入を気づかれていない渦彦は、仲間達を助けに向かった…。



【解説】

幼いときから過酷な試練に耐え、選び抜かれた忍者「鬼輪番」。
その中から選び出された若者たち五人と、紀州藩の切れ物目付、横笛将監(佐藤慶)との、秘術を尽した死闘を描く。
小池一雄原作、やまざき拓味、作画の同名劇画が原作。
劇画タッチの演出が見所である。



【岸田森の役】

玄海

僧侶に変装して紀州に五年間潜入していた、里隠れの「鬼輪番」。
寝返って、潜入して来た五人の若い鬼輪番たちの正体を横笛将監(佐藤慶)に密告、壊滅させる。
しかし、それは将監に信頼を得るための芝居。
本当の任務、紀州蕃が密かに調達した武器の蔵を探し出す事に成功する。
だが、裏切りはすぐに横笛将監にばれて逃亡、滅多切りにされる。
瀕死の状態で渦彦(近藤正臣)に武器蔵の場所を教えて息絶える。
後に友人として長く付き合うことになる、水谷豊との初共演作品でもある。



関連作品

水谷豊

傷だらけの天使 全26話(昭和49年1974
影同心U 第24話「そして影は去った!!」(最終話)(昭和51年1976
雑誌記事「続・男の特集 頼れる男の心のうち」 水谷豊/甦る・傷だらけの天使」(昭和52年1977
CM演出 「S&Bスナックチップ」(昭和52年1977
CM企画「S&B」スナックトースト野球篇」(昭和53年1978
CM企画S&Bスナックトースト 外野フライ篇(昭和54年1979
熱中時代(第2部) 第3話「早くも恐怖の通信簿」(昭和55年1980







昭和49年3月21日(土)公開


ゴジラ対メカゴジラ

東宝映像製作東宝配給
上映時間84分カラー作品 ワイド
監 督福田純原 作関沢新一福島正実脚 本山浦弘靖福田純


【出演】

大門正明(清水敬介)青山一也(清水正彦)田島令子(金城冴子)ベルベラ・リーン(国頭那美)松下ひろみ(宮島郁子)
平田昭彦(宮島秀人)小泉博(和倉博士)睦五郎(黒沼)岸田森(南原)佐原健二(船長)
草野大悟(柳川)鳥居功靖(田村)小川安三(現場監督)今福正雄(国頭天願)渡辺高光(黒沼の部下A)
遠矢孝信(黒沼の部下B)鹿島信哉柳沢優一北川陽一郎久須見護(キングシーサー)
図師勲(ゴジラ)森一成(メカゴジラ)   


【物語】

沖縄海洋博の工事現場に出現した洞窟から、不思議な壁画と怪物の置物が発見される。
壁画には「怪物が現われこの世を滅ぼさんとするとき、二匹の怪物が現われ人々を救う」と書かれていた。
予言は的中し、富士山からゴジラが現われる。
だが、街で暴れるゴジラの前に、もう一頭のゴジラが現われた。
片一方のゴジラは、ブラックホール第三惑星人の作ったサイボーグだったのだ。
メカゴジラから飛び散った宇宙金属が、沖縄の玉泉洞から発見されたものと同じだと気づいた宮島博士(平田昭彦)は、
宇宙人の秘密基地がそこにあると考え、調査に乗り出す。



【解説】

昭和291954 年に公開された『ゴジラ』から始まるシリーズの第14作目。
ゴジラ誕生20周年作品映画として公開された。
東宝チャンピオン祭り第11弾の目玉としての公開。
ほかには『ハロー!フィンガー5』『ウルトラマンタロウ 血を吸う花は少女の精』
『アルプスの少女ハイジ』『侍ジャイアンツ』が併映されている。
昭和50年に開催される沖縄海洋博をにらんで製作された、沖縄を舞台にした作品で、
沖縄の観光名所、玉泉洞などを背景に選んでいる。
また、沖縄の伝説上の生物シーサーを元にした怪獣キングシーサーが登場する。
この映画の一番強烈なキャラクターは、
ゴジラを徹底的に分析して作り上げた最強のサイボーグ怪獣メカゴジラだった。
評判も上々で、次回作『メカゴジラの逆襲(昭和501975 年)』に再び登場する。
また、平田昭彦、佐原健二、小泉博など、ゴジラ映画ゆかりの俳優が多数出演している。


【岸田森の役】

南原

インターポールの凄腕捜査官。
ブラックホール第三惑星人達の不穏な動きを探るために、敬介(大門正明)に接触をする。
ジャーナリストを名乗り、サングラスに黒ずくめと、非常に格好よく登場。
宮島博士(平田昭彦)と共に、メカゴジラのコントロール装置を破壊し、宇宙人の侵略を阻止した。
正体不明の怪しい活動から、後半宇宙人基地でのヒーローのような活躍へと、岸田森得意の落差をつける演技を最大限に活かしたキャラクター作りが見どころ。








昭和49年5月4日(土)公開


ロスト・ラブ ―あぶら地獄―

日活映画製作日活映画配給
上映時間80分カラー作品 ワイド
監 督小沼勝脚 本吉原幸夫


【出演】

内田あかり(冬見くみ子)富川K夫(夏目順一)扇ひろ子(津山春江)田島和子(鳴海美代子)砂塚秀夫(柿沼)
岸田森(鳴海修)ぴんから兄弟(特別出演)井上博一山本マキ(のり子)森みどり(愛子)
丘奈保美(飲屋風の女)矢代康二長弘野村隆沢田情児
島村謙次白井鋭近江大介露木譲北上忠行
織田俊彦橘田良江横田楊子庄司三郎氷室政司
影山英俊


【物語】

売れない歌手くみ子(内田あかり)は、ドサ廻り先で順一(富川K夫)と出会う。
似たような境遇だった二人は、互いに求めあい結ばれる。
いつまでも歌手の芽が出ないくみ子は、歌手への情熱が薄れ、順一と同棲生活を始めた。
だが順一は、蒸発した友人の妻、美代子(田島和子)の生活を助けるために、麻雀にのめり込んでしまう。
生活のために、クラブで歌い出したくみ子の歌が再び認められ、レコード会社から発売されることになった。
くみ子は、再起を決心する。


【解説】

一旦はあきらめた歌手への再起を賭けて、決意した結婚をも捨てる女の姿を描く歌謡映画。
監督の小沼勝は、日活映画を中心に作品を発表している監督で、ロマンポルノの中心的監督の一人として活躍した。
主役の内田あかりは、ロック歌手としてデビュー後、この映画の主題歌「浮世絵の街」がヒット。
後に芸名を内田明里と変更、歌手、女優として活躍したが、2011年には、再び芸名を元の内田あかりに戻している。



【岸田森の役】

鳴海修

夏目順一(富川K夫)の友人で、高校教師。
順一のように東京には出て行かず、北国にある順一の地元で五年前に結婚、娘一人がいる。
順一が偶然、東京で出会った修の妻、美代子(田島和子)は、修が蒸発したと言っていたが、
現実は逆で、美代子が不倫して、相手を追いかけて東京に来ていたのだ。
このショックで鳴海は高校教師を辞めてしまっている。
登場シーンは、最初とラストの三シーンほど。短いながら、主人公たちカップルの行く末に影響を与える役柄である。
順一に、諦めたような表情で淡々と妻の事を語るラスト近くの演技は、岸田森ならではのもの。








昭和49年6月15日(土)公開


修羅雪姫 怨み恋歌

東京映画製作東宝配給
上映時間89分カラー作品 ワイド
監 督藤田敏八原 作小池一雄上村一夫脚 本長田紀生大原清秀


【出演】

梶芽衣子(鹿島雪)原田芳雄(徳永周介)吉行和子(徳永あや)岸田森(菊井精四郎)南原宏治(鴉)
山本麟一(丸山警部)安部徹(寺内謙道)溝口舜亮(関口英三)浜田晃(岡田太吉)広瀬昌助(柴田悠太郎)
石矢博(吉沢)広瀬正一鈴木瑞穂(ナレーター)伊丹十三(徳永乱水) 


【物語】

父母の怨みを果たし終わった雪(梶芽衣子)は、凶悪犯罪人として捕まり、絞首刑の判決が下された。
だが執行の日、雪は謎の集団によって助けられ、菊井(岸田森)の元へと連れてこられる。
菊井は、雪の命と引き換えに、徳永乱水(伊丹十三)の命と、彼が持っている一通の手紙を奪うことを命じた。
雪は、女中として住み込むが、乱水の情熱に討たれ、菊井を裏切ってしまう。
それに気づいた菊井は、乱水を逮捕する手段に出る。
しかし、手紙は雪に託され、貧民窟で医者をしている弟の周介(原田芳雄)の手に渡った…。



【解説】

昭和481973年に公開された『修羅雪姫』の続編。
監督は、前作と同じ藤田敏八が手掛けている。
明治末期、無実の罪で投獄された女、小夜が獄中で生んだ娘の雪(鹿島雪)が、
紫紺の蛇の目傘に仕込んだ細身の刀を武器に、権力に立ち向かってゆく姿を描く、
梶芽衣子の人気絶頂時に製作された作品。
前作では、父母の怨みを晴らした雪が、今度は明治政府の政治的混乱に巻き込まれる。
作、小池一雄、上村一夫、画による同名劇画が原作。
壮絶な拷問シーンなど、残酷な描写が続出する。
劇画調メイクの濃いキャラクターが続出する作品である。


【岸田森の役】

菊井精四郎

政府の直属機関、特警の長官。
死刑囚の雪(梶芽衣子)を操り、アナーキスト徳永乱水(伊丹十三)の暗殺を企む。
雪の考えを読み取り、自由に動かそうとするが、
雪の怨念の強さが計算に入っていなかったために、早々に裏切られてしまう。
そして、最後は雪の怨みの一撃に斬り捨てられる。
血まみれで、文字通り惨殺ともいえるような壮絶な斬られ方だった。
青白いメイクで、充血気味の目とクマが、人間離れした不気味な印象を与える、強烈な悪役ぶり。
劇画から抜け出してきたようなアクの強い登場人物の中にあっても、岸田森は特に印象的だった。







昭和49年7月20日(土)公開


血を吸う薔薇

東宝製作東宝配給
上映時間83分カラー作品 ワイド
監 督山本迪夫脚 本小川英武末勝


【出演】

黒沢年男(白木)田中邦衛(下村)佐々木勝彦(吉井)岸田森(学長)桂木美加(学長夫人)
望月真理子(西条久美)太田美緒(三田村雪子)荒牧啓子(林杏子)麻里とも恵(野々宮敬子)片山滉(島崎)
鈴木治夫(警備員)二見忠男(駅長)小栗一也(細谷)細井利雄吉田静司(土屋刑事)
竹井みどり保坂六巳吉田真野子ロジャー・ブリーン伊藤雄之助(高倉刑事)


【物語】

八ケ岳山麓にある、80年の伝統を誇る聖明学園。
そこに、東京から新任の教師白木(黒沢年男)が就任してきた。
学長邸に案内された白木は、突然学長(岸田森)から、次期学長になるようにと告げられびっくりする。
その夜、学長邸に泊まった白木は、
夜中に事故で死んだはずの学長夫人(桂木美加)と、失踪中の女子学生、野々宮(麻里とも恵)と出会う。
しかしそれは、夢だか現実だかが判らない、不思議なものだった。
数日後、この土地の伝説に興味を持っている校医の下村(田中邦衛)は、白木の話を聞き二百年前の伝説を話す。
それは、転びバテレンとなった一人の白人が、この村で吸血鬼になったというものだった。
その夜から、寮の女学生達が次々と何者かの犠牲になってゆく…。



【解説】

女子学園を舞台に、若い娘を次々と襲う吸血鬼と、新任教師の闘いを描くホラー映画。
『呪いの館 血を吸う眼』(昭和461971年)で、正統派吸血鬼を描いた山本迪夫が、再び監督を担当している。
この作品は「血を吸う」シリーズの三作品目として制作されたが、三作品とも物語上のつながりは一切ない。
八ケ岳山麓という、密閉された場所を効果的に使い、
バタ臭いホラー作品を大まじめで描いているところが、非常に好感の持てる佳作。
無人駅にいる駅長二見忠男や、八ケ岳山麓にある朽ち果てた柩の描写など、
所々にホラーのつぼを得た演出がきっちりとなされている。
女子学園が舞台なので、生徒達が惜しげもなくヌードを披露し、次々と犠牲になってゆくのも見所の一つ。
吸血鬼は、首筋からではなく胸に噛みついて血を吸うという、エロティックな設定となっていた。
後年、山本監督はこの設定を考えついたのが岸田森だったかもしれないと語っている。
洋館や学生寮などをゴシック朝のデザインで統一して、
吸血鬼が登場しても不思議がない雰囲気を作りだすことに成功していた。


【岸田森の役】

学長

八ケ岳山麓にある、全寮制の女学校聖明学園の学長。
知的でインテリな雰囲気を漂わすが、
実は二百年前に転びバテレンから吸血鬼と化した白人の実体が憑りついている。
次期学長となる男の顔をはがし、自分の顔と取り換えることによって、命を永らえていた。
学長の時と吸血鬼の時の演技の落差が激しく、これが同じ役者の芝居かと思うほどに極端に変る。
吸血鬼の時の、うなり声を上げながらの暴れぶりがすさまじい。
ラストは、火掻き棒を胸に打ち込まれ絶命、白骨化する。
一度刺した後も、白木(黒沢年男)に何回も棒を打ち込まれて、
やっと倒れるという、本場の吸血鬼顔負けの凶暴さだった。


関連作品

山本迪夫監督

東京コンバット 第3話「銀色の死刑台」 (昭和43年1968
呪いの館 血を吸う眼          (昭和46年1971
火曜日の女「木の葉の家」全6回     (昭和47年1972
木曜ゴールデンドラマ「大誘拐 陽気なお婆ちゃんの身代金は何と百億円!」(昭和56年1981
「追悼岸田森 山本迪夫」        (昭和58年訃報1983


ドラキュラ

呪いの館 血を吸う眼  (昭和46年1971
新聞記事 和製ドラキュラ 今度は「血を吸う薔薇」植物性′ゥ込まれたかな 岸田森  (昭和49年1974
日曜☆特バン 第4回「戦慄!!ドラキュラは今でも生きている!!」 (昭和51年1976
金田一耕助の冒険  (昭和54年1979
SPECIAL INTERVIEW 「フルコース ミスターどらきゅら 岸田森VSドラキュラ ドラキュラのルーツをたずねて」  (昭和54年1979
もんもんドラエティ 全30回(昭和56年1981
インタビュー「日本一の吸血鬼役者、岸田森!」  (昭和56年1981
木曜洋画劇場「ドラキュラ都へ行く」  (昭和56年1981
インタビュー「日本一の吸血鬼役者、岸田森!」 (昭和56年1981







昭和49年8月17日(土)公開


樺太一九四五年夏 氷雪の門

ジャパン・ムービー・ピクチュア製作東映洋画系配給
上映時間120分カラー作品 ワイド
監 督村山三男原 作金子俊男上村一夫脚 本國弘威雄


【出演】

二木てるみ(関根律子)藤田弓子(坂本綾子)岡田可愛(斉藤夏子)鳥居恵子(藤倉信枝)今出川西紀(鳥貝啓子)
木内みどり(仲村弥生)八木孝子(堀江正子)桐生かほる真木沙織(三好とく)岡本茉利
相良ふさ子藤園貴己子北原早苗(林田千恵)大石はるみ野村けい子(石田ゆみ)
園千雅子西田真知子麻里ともえ野々深知益田愛子
未宗稔子遠山真古都青山光世浜森千代保坂六己
宇佐美豊内海広子増島亮司川上尊志生方中
佐田淳水野哲佐藤浩司亀田秀紀佐藤宏之
山根久幸田中一斉藤武男三夏伸大杉雄二
小池正史青木敏夫佐野光洋水野善行原田君事
杉浦真三雄寺田誠大浜詩郎山本哲也藤山浩二
石崎二郎平泉征久野四郎岸田森(田尻中佐)北城寿太郎
織本順吉(神崎雄一)見明凡太朗今福正雄(関根辰造)柳谷寛伊沢一郎
ピーター・ウィリアムス久米明(渡部)藤岡重慶(清水連隊長)中条静夫三上真一郎(吉崎大尉)
鳳八千代(仲村悦子)赤木春恵(関根しず)七尾伶子(森本きん)城山順子柳川慶子(菅原良子)
黒沢年男(村口副官)佐原健二(岡谷俊一)浜田光夫(中西清治)千秋実(植中賢次)栗田ひろみ(菅原美保子)
岡田由起子(斉藤秋子)南田洋子(安川房枝)若林豪(久光忠夫)丹波哲郎(鈴本参謀長)田村高廣(安川徳雄)
島田正吾(仁木師団長)臼井正明(ナレーター)   


【物語】

昭和二十年夏、樺太西海岸にある眞岡町の郵便局では、刻一刻と戦況の悪化を伝える情報が入ってくる。
だが、樺太自体が戦火を受けていないために、緊張の中にも平和な日々が続いていた。
広島に原爆が投下された数日後の八月八日、ソ連軍は突如参戦し、日本への進撃を開始した。
平和だった眞岡町には、戦禍に追われた罹災者達が長蛇の列をなして流れ込んでくるようになる。
八月十五日、戦争は突然に終わる。
だが、ソ連軍の進攻は止まなかった。
眞岡郵便局の9人の交換嬢達は、避難を続ける多くの人達に情報を送るため、
青酸カリの入った瓶を胸に、ソ連軍の攻撃が続く中、必死に職場を死守する。



【解説】

第二次世界大戦末期の樺太を舞台に、
ソ連侵攻作戦の真っただ中で最後まで通信連絡を続け、若い命を投げ出した乙女達の実話を描く。
原作は、北海タイムスに連載された金子俊男の「樺太1945年夏、樺太終戦の記録」
ソ連の戦争参加、市民への虐殺行為があからさまに描かれていたりしたので、
外交上の問題が発生してしまう。
そのために東宝が配給を放棄してしまい、結局は東映洋画系で配給される事になる。
公開されるまでに半年ほどかかった。
タイトルの「氷雪の門」とは、北海道稚内市の稚内公園にある女人像のこと。


【岸田森の役】

田尻中佐

札幌にある第五方面軍司令部から、
樺太、豊原の第八十八師団司令部、鈴本参謀に、電話で指令を伝える。
軍人らしく五分刈りで口髭。
直立不動で電話する。
前半二シーンのみの短い出演。







昭和49年9月21日(土)公開


青葉繁れる

東宝製作東宝配給
上映時間87分カラー作品
監 督岡本喜八原 作井上ひさし上村一夫脚 本小林俊一岡本喜八


【出演】

草刈正雄(渡部俊介)丹波義隆(田島稔)秋吉久美子(若山ひろ子)伊藤敏孝(デコ)粕谷正治(ジャナリ)
名古屋章(稔の父)辻伊万里(斉藤先生)草野大悟(軽石担任)岸田森(教育委員)鶴間エリ(ハツ子)
笠井香里(二女高演劇部たん瘤)丘ゆり子(松子)芳賀まり子(二女高演劇部主将眼鏡)岩崎智江(チョロ松の妻)中島公子(幻想の女学生・慶応)
千波恵美子(幻想の女学生・帯広畜産)佐藤典子(幻想の女学生・東大)栗原育代(二女高演劇部五十五点)林裕子(二女高演劇部四十点)島もとき(一高演劇部主将女形)
藤原美智子(二女高演劇部三十五点)藤田漸(サッカー部員)十朱幸代(多香子)ハナ肇(チョロ松校長) 


【物語】

仙台一高に通う劣等生、田島稔(丹波義隆)は、
いつもきれいな女学生を見て強姦することばかりを夢想している。
ある日、東京の名門日比谷高校から、見るからに二枚目の渡部俊介(草刈正雄)が転校してきた。
稔達の憧れの的である、スナックのママお多香(十朱幸代)の弟である。
俊介は、一高にやってきた二女高の演劇部マドンナひろ子(秋吉久美子)に一目ぼれ。
難航していた合同公演の話を強引にまとめ、自分も劇の主役におさまってしまう。
面白くない稔達は、自分たちも演劇部に入部するが、セリフはたった一つだけ。
俊介の活躍がまぶしかった。
だが、ある日突然俊介が失踪してしまう。
ひろ子が退学して東京へと去ってしまったのだ…。



【解説】

井上ひさしが、昭和25、6年頃の仙台一高を舞台にして描いた、同名の自伝的青春小説を映画化。
学校が男女共学制を敷いていたために、いつも女性に飢えている劣等生、稔(丹波義隆)と、
その仲間デコ(伊藤敏孝)、ジャナリ(粕谷正治)の三人組に、
東京から転校してきた俊介(草刈正雄)が加わったことから巻き起こる騒動を、独特なタッチで描く。
物語を現代に置き換え、原作では四人組に俊介が加わる事になっていた設定を、
映画ではキャラクターを整理して三人組に俊介が加わるように改変している。
主人公を演じた丹波義隆が、原作者井上ひさしそっくりの風貌で好演した。
また、劇中登場するヒロインひろ子は、実在の女優若尾文子がモデルだ。
全編手持ちカメラで撮影された独特な撮影が、効果を上げていた。


【岸田森の役】

教育委員

稔(丹波義隆)達が起こした強姦未遂事件の責任をとって、
辞表を提出していたチョロ松校長(ハナ肇)との話し合いの席に、ワンシーンのみ登場。
全て穏便に、事なかれ主義的に納めようとする日和見的な委員を、
東北弁の歯切れの悪いセリフ回しで演じている。


関連作品

岡本喜八

斬る  (昭和43年1968
赤毛  (昭和44年1969
座頭市と用心棒 (昭和45年1970
激動の昭和史 沖縄決戦 (昭和46年1971
にっぽん三銃士 おさらば東京の巻 (昭和47年1972
吶喊(とっかん) (昭和50年1975
金曜スペシャル「時効まで後26日!実録・三億円事件」 (昭和50年1975
姿三四郎  (昭和52年1977
ダイナマイトどんどん  (昭和53年1978
ブルークリスマス  (昭和53年1978
英霊たちの応援歌  (昭和54年1979
時代劇スペシャル 「着ながし奉行」  (昭和56年1981
近頃 なぜか チャールストン  (昭和56年1981







昭和49年10月26日(土)公開


あさき夢みし





中世プロダクション
=日本アート・シアター・ギルド製作
ATG配給
上映時間119分カラー作品 シネマスコープ
監 督実相時昭雄脚 本大岡信


【出演】

ジャネット八田(四条)花ノ本寿(御所)寺田農(霧の暁)岸田森(阿闍梨)丹阿弥谷津子(大宮院)
三条泰子(前斉宮)殿岡ハツエ(遊女)原知佐子(目井)渡辺文雄(富豪)東野孝彦(近衛大殿)
天田俊明(万里小路)小松方正(善勝寺大納言)村松克己(僧)金内喜久男(男)樋浦勉(武士)
篠田三郎(庶民男)奥村公延(三条坊門)広瀬昌助(家司)平泉征(武士)高倉英二
大木正司(庶民男)柴俊夫(警護の武士)森秋子西恵子星光子
小川順子高橋みどり(和歌)堀井永子(富豪の妻)白石奈緒美(庵主)桜井とし子
真木沙織福井淑恵小久江義枝玄武多佳子岡村亜美
古川義範(家来)高野浩幸(稚児)手塚学彈忠司毒蝮三太夫(平二郎左衛門)
観世栄夫(客)古今亭志ん朝(為家)清水(糸宏)治(語り)  


【物語】

十三世紀後半、法皇の皇子、後深草天皇(花ノ本寿)は、
帝位を弟の亀山天皇に譲り、若くして富小路殿に御所を営んでいる。
この院には、御所の寵愛する四条(ジャネット八田)がいた。
しかし、四条には霧の暁(寺田農)という愛人がいる。
二人の間には子供まで出来ていたが、醜聞を嫌う御所の計らいで奪い取られていた。
ある日、御所が病に倒れる。
その時、祈祷に来た御所の腹違いの弟、阿闍梨(岸田森)が四条を見初め、荒々しい情熱で迫る。
二人の間には子供が生まれるが、この子供も御所の計らいで奪い取られてしまう。
阿闍梨は、流行病であっけなく死んでしまい、四条は自分の生活のはかなさを悟り出家をする。
踊念仏の世界に憧れを持っていた四条は、
見事な腕前の絵や書、連歌等を道中の糧として放浪を続けた。



【解説】

『哥』(昭和471972年)以来、2年ぶりにATGとの提携で撮影された、実相寺昭雄監督作品。
十三世紀後半の宮廷の後宮に生きた、実在の女性をモデルに、
詩人で明大教授の大岡信が書き下ろした異色作品。
帝位を退いた後深草院(花ノ本寿)に寵愛された四条(ジャネット八田)が、
自らの生活の無常を悟り、出家して日本各地を絵師として放浪する姿を描く。
主役のジャネット八田は、ファッションモデル出身で、劇映画は初出演。
16歳から40歳までの一生を見事に演じた。



【岸田森の役】

阿闍梨

後深草院(花ノ本寿)の腹違いの弟で、真言密教の高徳の僧。
後深草院が病に倒れたときに、五日間祈祷を続けるが、
その時に見初めた四条(ジャネット八田)と関係を持ってしまう。
後に子供まで出来るが、流行病であっけなく死んでしまった。
祈祷のシーンでは、威厳がある祈りを見せてくれるが、
四条に迫るときには懇願しながら、なさけなくも荒々しく襲いかかる。
一つの役の中で落差をつける、岸田森得意の役作りを見せた。


関連作品

実相寺昭雄

近鉄金曜劇場 芸術祭参加作品 「正塚の婆さん」  (昭和38年1963
怪奇大作戦 全26話  (昭和43年1968
第28話「ウルトラ特攻大作戦」 (昭和46年1971
曼陀羅  (昭和46年1971
  (昭和47年1972
シルバー仮面ジャイアント(昭和47年1972
歌麿 夢と知りせば   (昭和52年1977
CM演出「S&Bスナックチップ」 (昭和52年1977
CM企画「S&B」スナックトースト野球篇」 (昭和53年1978
CM企画S&Bスナックトースト 外野フライ篇 (昭和54年1979


傷だらけの天使 第5話「殺人者に怒りの雷光を」(昭和49年1974
傷だらけの天使 第11話「シンデレラの死に母の歌を」
雑誌記事 「 ひろめやひろめ 男優は頭を剃るのが当然〜岸田森が頭髪をバッサリ〜」(昭和49年1974
新聞記事 「艶技中にツルリ!岸田森、湯気の出るベットシーン 川村真樹を相手に NTV「傷だらけの天使」」(昭和49年1974




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